8~9日に首都圏を直撃した台風15号の高波で、横浜市金沢区の工業団地が受けた浸水被害の状況が徐々に明らかになってきた。これまでの市などの調査で、高波が標高10メートルを超える地点にまで到達していたことが判明。浸水範囲は幸浦、福浦両地区で計3・9平方キロメートルに及び、471事業所で被害が確認されたが、さらに増える見通しだ。直撃を受けた護岸も10カ所以上で損壊、今後に不安を残している。
浸水3平方キロ超、被災470社
樹木がなぎ倒され、押し流されてきたとみられる段ボールや草木などが歩道上の植栽に絡まっている。砂などが堆積して茶色く汚れた路面が、水流の激しさをうかがわせている。
市消防局の横浜ヘリポート(金沢区福浦3丁目)付近。臨海部の南端に位置するこの施設も被災したが、近くの緑地内で高波が標高10・9メートルの地点にまで到達していたことが市と国土交通省の調査で確認された。足元の草が押し倒されるなどしており、一帯は立ち入り禁止となっている。
その北側に広がる工業団地には、金属や機械加工、建材、倉庫、運送など幅広い業種の事業所が集積。海に面した区画を中心に深刻な被害に見舞われている。
その一つ、古紙卸売りの「國光」横須賀事業所(福浦1丁目)では高さ1・5メートルまで浸水。重さ1トンもある古紙をまとめたブロックが50個以上、敷地の外に押し流された。建屋内の高さ3メートル以上の所に枝が引っかかっており、高波の威力を物語っている。
災害ボランティアの協力も得ながら清掃や片付けを進め、残っていた古紙の出荷にはどうにかこぎ着けたが、「浸水した機械は使えない状態。事業の本格的な再開は見通せない」と市村敏明所長は苦境を語る。
周辺では、フェンスやガードレールがひしゃげ、被災したミニバイクなども残ったままだ。施設や設備が損壊し、商品が浸水しただけでなく、車両やトラックを動かせなくなった事業所が多く、事業再開の妨げになっている。
通りのあちこちに積まれていた「災害ごみ」の回収と集積が進んでいるものの、「大きな部材も多く、まだ3分の1ぐらいしか運ばれていない」と、1メートルほど浸水した安藤建設機材センター(福浦2丁目)の関係者は言う。
市港湾局によると、高波の直撃を受けた護岸(延長約3・2キロメートル)の高さは標高4・3メートル。被災箇所は13カ所に上り、上部が崩れ落ちるなどの被害が計830メートルに及んだほか、護岸本体がずれた所もある。
市は大型土のうを積むなどの応急対策を急いでいるが、本格的な復旧をどう進めるかは固まっていない。事業者からは「同じ高さの護岸を復旧しても、再び被害を受けてしまうので、従来より高くしてほしい」と対策強化を求める声が相次いでいるが、市は「今後、国土交通省と調整したい」とするにとどめている。
自助のヒント 罹災証明書
「罹災(りさい)証明書」は、市町村が災害対策基本法に基づき被害の程度を証明する書面で、現地調査などを踏まえて被災者に交付する。損害保険や災害廃棄物の処理、税の減免などに役立てられる。住宅の場合は、損害の割合に応じた全壊や半壊といった判定結果によって、被災者生活再建支援金を受け取ることができる。浸水被害が広範囲に及んだ横浜市金沢区の工業団地に対しては、金沢消防署と金沢区役所が臨時の発行窓口を市金沢産業振興センターに設置。27日まで対応する(22、23日は除く)。