20日のサッカーJ3最終節でSC相模原が2位に入り、来季のJ2昇格を決めた。愛媛県今治市内のスタジアムで選手と喜びを分かち合ったのは、会長の望月重良さん(47)。縁もゆかりもなかった相模原市でゼロから立ち上げたクラブの生みの親は「全ての選手、スタッフが最善の準備をしてくれた。みんなで勝ち取った昇格だ」と強調した。
たまたま足を運んだ先で
「知人に誘われ食べに行った相模原の店で、店長からチームをつくってほしいと頼み込まれた」。クラブをつくった理由を聞かれるたびに、望月さんは笑いながら言う。
生まれはサッカーどころの静岡。名門清水商高(現清水桜が丘高)から筑波大を経てJ1の名古屋グランパスエイト入りし、日本代表でも活躍した。当時はJ2の横浜FCで現役引退を決めたばかり。相模原にはたまたま足を運んだだけだった。
その場ではお茶を濁したが「真剣に考えた。怖さや不安はなく、熱意しかなかった」と振り返る。母体となる企業チームやクラブがない中、その翌年の2008年に設立。資本金900万円は全て自ら賄った。
「会社も選手もいないゼロからのスタート。いつか観客席をいっぱいにしたいという夢があった」
スタンドが緑に染まった日
社会人の県3部リーグから出発し、毎年カテゴリーを上げて14年にはJ3へ参入。望月さんは強化とともに、学校でのサッカー教室など地域活動に取り組み、ホームタウンも座間、綾瀬市、愛川町に広げてファン拡大に力を尽くす。
「観客席をいっぱいに」との思いがかなったのは18年12月のJ3最終節。高校時代の後輩で元日本代表GKの川口能活選手の引退試合でもあった。スタンドはファンがまとったチームカラーの緑に染まった。
驚異の行動力も「地域密着への通過点」
「地域が一つになれるようなチームが欲しくて頼んだが、本当につくってくれるなんてびっくり」
クラブ誕生のきっかけになった相模原市中央区の飲食店「築地山加」の山口篤史店長(44)は、その行動力に驚きを隠せない。「今も店に顔を出してくれて『おまえのおかげだよ』ってよく言われる。昇格は本当にうれしいし、次の舞台でもやってくれる」とエールを送る。
来季のJ2昇格を決め、望月さんは三浦文丈監督(50)や選手らと抱擁しながら、決意を新たにした。「ここはあくまで通過点。クラブが半永久的に、地域のためにあり続けるために、まだまだやることはたくさんある」
SC相模原・望月会長 ゼロからクラブ創設、きっかけは…
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初のJ2昇格を決め、サポーターにあいさつするSC相模原の望月会長(中央)=愛媛県今治市 [写真番号:452868]