考え交流し学び深め
「自分と違う受け止め方に気付けたね」
葉山中学校2年生の国語科、太宰治の小説「走れメロス」を題材にした授業だ。「似ている言葉を手掛かりにして考えていけばいいのかなぁ」「作者が伝えたかったことを想像しながら考えればいいんじゃないかな」「友情の大切さが中心になって展開していると思う」
クラス全員の考えが書かれたカードを前にして3、4人のグループになった生徒たちが、自分たちが読んで考えたことと比べながら考えを巡らせている。
ある生徒は教科書を読み返し、また、ある生徒は自分の考えをつぶやきながら、何とか考えをまとめようとしている。
そして、先生の問い掛けで、グループごとに発表を始める。
「自分を信じることの大切さや、人にはいろいろな面があるということが伝わってきた」と、ある生徒が発言した。
先生が詳しく説明するよう促すと、その生徒が「全体を、告白するような文体で書き、自分がしていることが正しいのか、常に自分に語り掛けているような気がする…」と続けて言う。
この発言を聞いた他のグループの生徒たちは「なるほど」とうなずきながら聴き、つなぐ言葉を探している。そして「複数の登場人物の心情を描写することで、さまざまな角度から、読み手がこの物語を味わえるようにしている……」と述べた。
前のグループの生徒が発表する言葉を受け止め、別のグループの生徒がつなぎ、教室全体で考えるようになってきた。生徒たちが発表を終えたとき、先生がゆっくりと言う。「今日は、自分とは違う受け止め方があることに気付けたね」
同じ作品に触れても、読み手が持つ知識や経験により、受け止め方は異なる。読み、考え、伝え合うことで、その違いに気付き、考えを交流することが大切であることを知る。生徒たちは、互いの考えを交流しながら、学びを深めていく。
さまざまな教室から、県教育委員会の指導主事や先生らで構成する「学び見守り隊」がリポート
神奈川県教育委員会では、他にも各校の取り組みを「元気な学校づくり通信『はにい』」で紹介。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f420082/