心込めてだるま作り
受験の3年生へ、「喜んでくれるかな」
県立平塚ろう学校中学部の作業グループは、2・3年生の9人が、昨年6月から張り子のだるま作りに取り組んだ。手のひらに乗せた新聞紙にのりを付け、素焼きの型に貼っていく。「先生、できた」と一人の生徒が手を挙げる。すると、「できましたって報告するんだよ」と隣の生徒が助言をする。いわゆる「報告・連絡・相談」は働く上で大切なルールだ。
12月10日は、受験を控えた3年生にだるまをプレゼントするために16個を完成させる大事な日だ。型を外し、貼り合わせただるまを赤く塗る作業が始まる。
「しわでへこんだ所も筆の先でつつくように塗ってください」と先生が手話を交えて指示を出す。「しわ? つつく? よくわかりません」と生徒が首をかしげる。「これがしわ、筆をこう持って先でつんつんとね、これをつつくと言うんだよ」と先生がやってみせる。「本当だ、つついたらきれいに塗れました」と手話で答える。
だるまに挿した割り箸を持って回しながら塗っていく。みんな目を凝らしてしわのへこみも塗っていく。塗り終えただるまは割り箸ごと箱に挿して乾かす。
「ほら、まるでりんごあめみたい、お祭りの屋台で売っているでしょ」「ああ、それなら知っているよ、りんごあめって言うんだね」
こうして生徒たちは技術を身に付けるだけでなく、言葉の世界も広げていく。
だるまに顔を貼り、台座と「開運平ろうだるま」の名前を取り付けて完成。全て並べて最後の点検だ。
「これが一番上手にできたね」「3年生、喜んでくれるかな」
心を込めて作ったものを誰かが喜んで使ってくれる。授業を通して、働くことの意味を生徒たちは、少しずつ学習していく。
さまざまな教室から、県教育委員会の指導主事や先生らで構成する「学び見守り隊」がリポート 神奈川県教育委員会では、他にも各校の取り組みを「元気な学校づくり通信『はにい』」で紹介。 http://www.pref.kanagawa.jp/docs/v3p/seitosidou/hanii.html
県立平塚ろう学校(平塚市大原)
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「これが一番きれいです」 [写真番号:519559]
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塗り残しがないように目を凝らす [写真番号:519560]