沖縄の本土復帰から15日で48年。復帰世代の親を持つ若者たちが今、政治を動かしている。その中心にいる元山さんが語った。自身の半生と若者たちの姿、そして、本土に伝えたいこと。
丘から見下ろし、海岸から見渡し、船上から眺める。辺野古の海は、息をのむほどに美しい。
沖縄本島北部の東海岸。降り注ぐ陽光で趣を変え、見慣れたはずのウミンチュ(漁師)でさえ「刻一刻と表情が変わる」とため息を漏らす。ひとたびシュノーケリングで海中に潜れば熱帯魚やサンゴに囲まれ、あふれる命に心が揺さぶられる。
4月21日夜、ツイッターを眺めていると、ある投稿が目に留まった。
〈沖縄が新型コロナの対策に追われる中、辺野古新基地建設の手続きを進めようとする国。こんなことある? 沖縄県民殺そうとしてるとしか思えないけど…〉
憤怒、無念、悲哀、辛苦-。わずか69字に凝縮されたウチナーンチュ(沖縄人)の思い。投稿には翠玉(すいぎょく)色の海が埋め立てられるさまを大写しにした地元紙の配信記事が添えられていた。
投稿の主は、「『辺野古』県民投票の会」元代表の元山仁士郎さん(28)。2019年2月、沖縄の人々が辺野古新基地建設反対の民意を示した県民投票の実現に尽力した。この春、都内の大学院の博士課程に進んだが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今は故郷の沖縄で過ごす。
新基地建設は計画の帰趨(きすう)を握る問題が浮上し、重大な局面を迎えている。
予定地には「マヨネーズ並み」と形容される軟弱地盤が広がっていることが判明した。地盤改良は世界的にも類を見ない難工事が予想され、着工には県に設計変更を申請し、承認を受けなければならない。
新たな工事を巡る対応が焦点となる中、安倍政権は元山さんがツイッターに投稿した数時間前に申請書を県に提出した。新型コロナ対策で県が独自の緊急事態宣言を出した翌日だった。自ら「不要不急」の自粛を訴えながら、対応に追われる県に分厚い申請書を運び込み、承認を迫る。出勤職員を減らさざるを得ない中、命を守る力をそぐ無慈悲の極みだった。
辺野古の命とウチナーンチュの命。私には、安倍政権がどちらの命も軽んじているように映る。そして、どれほどの理不尽に直面しようとも冷静と平穏を常にたたえる元山さんがツイッターでにじませた激情は、わずか2カ月前、那覇市内で会った時の柔らかな雰囲気と乖離(かいり)し、事態の切実さをうかがわせた。