社会

箱根噴火対策強化へ 水蒸気爆発で避難計画 地元防災協議会が着手

  • 公開:2014/10/05 03:00 更新:2015/07/11 00:59
  • 神奈川新聞

県内唯一の活火山、箱根山で噴火に備えた避難対策が強化される。地元の箱根町が中心となり今夏に発足した火山防災協議会は、本年度中にも水蒸気爆発を念頭に置いた避難計画づくりに着手。計画に基づいた訓練も実施し、避難のあり方を検証する。箱根は群発地震活動が活発な一方、噴火の間隔が長く、直近は12~13世紀ごろのため、活火山としての認知度が低いとの指摘がある。山頂付近は有数の観光地であると同時に生活の場にもなっていることから、異変をいち早く検知する観測網の充実も課題となっている。

◆年度内にも策定着手

同町や周辺市町、県などに気象庁、陸上自衛隊が加わって7月に設立した箱根火山防災協議会は、関係機関による情報交換が主だった従来の連絡会議より役割を拡大。具体的な噴火対策を進めるため、影響が居住地域に及ぶ場合を想定した住民らの避難計画をまとめることにした。

本年度末までに協議会をあらためて開き、過去の水蒸気爆発と同程度の噴火が起きた場合の影響範囲を示した2004年作製の火山防災マップを基に作業を始める方針だ。火口を大涌谷に設定したこのときの試算では、車の通行などに支障が出る堆積厚1センチ以上の降灰は芦ノ湖畔を含む半径2キロの範囲に及び、爆発の規模によっては火山灰より大きい噴石が同1・5キロの範囲内に降り注ぐ恐れがあるとした。

こうした噴火が実際に起きるか、火山性地震の回数などから切迫していると判断されれば、気象庁が運用する5段階の噴火警戒レベルは最も高い「5」に引き上げられ、周辺住民は避難が必要となる。ただ「具体的な対象地域は決められていないため、避難計画を定める中で位置付ける」(箱根町総務防災課)方向だ。

箱根山の噴火警戒レベルは09年3月の導入以降、レベル1の「平常」が続いている。昨年1~3月ごろに地震の回数が約2千に上る群発地震があったが、警戒レベルは引き上げられていない。

より長期間に及んだ01年6~10月の群発地震と同規模の活動が起きた場合や噴気の異常などが確認されればレベル2となり、大涌谷の想定火口域周辺への立ち入りが規制される。近年で比較的規模の大きい群発地震は06年と08年、09年、東日本大震災後の11年にも起きている。

■ 箱根山の噴火警戒レベル

レベル5

状況・重大な被害及ぼす噴火が発生か切迫

主な防災対応・危険な居住地域からの避難

レベル4

状況・重大な被害の噴火の予想

主な防災対応・要警戒居住地域からの避難準備

レベル3

状況・重大な影響の噴火が発生か予想

主な防災対応・想定火口域から700メートル程度立ち入り禁止。県道の通行止め拡大

レベル2

状況・火口周辺に影響の噴火が発生か予想

主な防災対応・想定火口域周辺の立ち入り禁止。一部県道や登山道の通行禁止

レベル1

状況・火山活動は静穏

主な防災対応・状況に応じて立ち入り規制

◆「生きている火山」

直近は12~13世紀

箱根山の過去の噴火活動は堆積した火山灰などから解明が進み、多様な噴火形態だったことが明らかにされている。直近の噴火は12~13世紀。それ以前は2千年前と3千年前にあり、これらはいずれも水蒸気爆発だったとみられている。

3千年前の噴火では、崩れた土砂が早川の上流をせき止め、芦ノ湖が姿を現した。マグマが最後に噴出したのもほぼ同じ時期で、冠ケ岳(1409メートル)が形成された。

県温泉地学研究所の萬年一剛主任研究員によると、12~13世紀に噴火が起きていたことは地質の調査から10年ほど前に解明された。ただ、噴火について書き留めた史料は見つかっていないという。

一方、大規模な火砕流を伴った最大級の噴火は6万6千年前にあった。火砕流は現在の横浜市保土ケ谷区付近に到達したほか、海を渡り三浦市・城ケ島にも達していた。さらに時代をさかのぼり、25万年前にも同様の噴火があったとされるが、似たような大規模噴火の可能性は現在は低いとみる専門家が多い。

各地で火山地質の調査を続ける県立生命の星・地球博物館の笠間友博主任研究員は「噴火活動の推移を見る限り、はるか昔に起きたような爆発的噴火ではなくなってきているが、次にどのような現象が発生するかは分からない。多様な噴火にどう備えるかは非常に難しい問題だ」と指摘。

温地研の竹中潤研究課長は「箱根は山頂付近に日常生活の場があるため、活火山との認識があまり広まっていないのではないか」との見方を示し、「今のところ異常は見られないが、住む人も訪れる人も『生きている火山』であることを理解してほしい」と注意を促す。

【神奈川新聞】


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