ヨコハマ映画祭で作品賞など6冠達成|カナロコ|神奈川新聞ニュース

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ヨコハマ映画祭で作品賞など6冠達成

  • 公開:2019/02/03 09:56 更新:2019/02/04 15:11
  • 神奈川新聞

【K-person】濱口竜介


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 昨年公開された映画「寝ても覚めても」が、第40回ヨコハマ映画祭の作品賞、監督賞など、計6冠に輝いた。「6冠に正直、とても驚いています。観客が選んでくれた賞なので、大きな自信につながります」と表情を緩ませた。

 映像ワークショップに参加した演技経験のない女性4人を主演に起用した5時間17分の長編映画「ハッピーアワー」が、世界各国の映画祭で称賛され一躍脚光を浴びた。3年ぶりとなる「寝ても-」は商業映画初挑戦にして、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されるなど、まさに次代をリードする俊英だ。

 ヨコハマ映画祭では、「寝ても-」で一人二役を演じた俳優の東出昌大も主演男優賞に輝いた。「原作の小説では、姿が似ていても、違う男性の設定でしたが、映画では東出さんが一人二役を演じなければならない。映画化することは、映像表現としても新たな挑戦になると思った」と振り返る。

 “濱口メソッド”とも言われる独特の演出方法で知られている。役者がカメラの前で演技をする前に、せりふの「棒読み」を100回近く繰り返すのだ。

 「演技とは、裸の王様のようなもの」と感じてきた。だからこそ、「演技をする役者の恐怖を和らげたい」とこの方法を取り入れた。「棒読みを繰り返すことで、本番ではどんなニュアンスで言うのか役者同士も知らない。予測できないからこそ、生の感情で演じることができる」と語る。「実際、どれだけ効果があるかは分かりませんが…」とはにかむが、「役者や演出側がこの方法を通して、一緒に時間を重ねていくことも一つの目的です」と打ち明ける。

 川崎市生まれ。東大、東京芸大大学院映像研究科で学んだ異色の経歴だ。映画の原点は、「小学5年の時に見た『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』」と振り返る。芸大では映画監督の黒沢清に師事し、映画製作の基礎を身に付けた。

 「『どうやって撮影したの?』と驚かせる要素が、映画には必要だと黒沢監督の授業から学び取ったこと」と語る。幼い頃、「バック-」を見た時の感動とも、まさに重なる気づきだった。「映画には“魔法”のような瞬間が必要なんです」と柔和な表情を見せた。

はまぐち・りゅうすけ 1978年生まれ。横浜市在住。2008年、東京芸大大学院映像研究科の修了製作「PASSION」がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。15年、長編「ハッピーアワー」を発表し、ロカルノ、ナント、シンガポールほか国際映画祭で主要賞を受賞。映画「寝ても覚めても」(原作・柴崎友香)が、第40回ヨコハマ映画祭で作品賞など計6冠を達成した。同作のBlu-ray&DVDは3月6日発売(発売元:バップ)。


記者の一言
 本作で本格演技デビューした唐田えりかがヨコハマ映画祭の最優秀新人賞、伊藤沙莉も同映画祭の助演女優賞に輝いた。「レベルの高い演技と撮影だったので、うれしいし、誇らしい。キャスティングが成功したと思う」と喜ぶ監督。カンヌも経験し、「観客からの大きな拍手に、本当にぼーっとしましたね」と、照れた様子で語ってくれた。「趣味を仕事にしたので、趣味がないんです」と根っからの映画好き。多忙な中でも「1日に1本は見るかも」と話す。前作の「ハッピーアワー」は5時間余りとは思えないほど、物語に見入った衝撃的な作品だった。次回作も楽しみに待ちたい。


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