【減災新聞】南海トラフ「連動」備え 対応検討も認知度低く 気象庁、警戒情報運用1年  |カナロコ|神奈川新聞ニュース

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【減災新聞】南海トラフ「連動」備え 対応検討も認知度低く 気象庁、警戒情報運用1年  

  • 公開:2018/12/02 11:44 更新:2018/12/02 12:29
  • 神奈川新聞

 「実現困難」との判断から取りやめられた東海地震の予知に代わり、南海トラフ地震の警戒情報の運用が始まってから、1年が経過した。同トラフで予想されるマグニチュード(M)8~9の巨大地震につながる異常な現象はこれまで確認されておらず、日常的な観測の結果を知らせる月1回の「定例情報」の発表が続く。一方で、特異な地震活動や異変があった場合に緊急的に出される「臨時情報」の時に自治体や企業、住民などが1週間程度取るべき被害軽減策は固まっておらず、政府・中央防災会議の作業部会が年内の取りまとめに向け議論を急いでいる。
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続く定例


 「現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません」

 11月7日に気象庁から発表された定例情報。毎月1回開かれる「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」(会長・平田直東大地震研究所教授)が、静岡から九州の沖合にかけての領域で起きた地震活動や地殻変動などを分析。観測された現象に異変がなければ、その旨を定例情報として公表している。

 今月の情報では、10月7日と11月2日に発生したM5程度の地震について言及されたものの、南海トラフは日常的に地震が少ないという特徴がある。昨年11月27日に定例情報の第1号が発表されて以降、毎月ほぼ同じ内容が公表されており、異変が起きた場合の臨時情報は出されたことがない。

 気象庁が臨時情報の発表対象に挙げるのは、(1)M7以上の地震(2)M6以上で特異な地殻変動を伴った場合-など、想定される巨大地震との関連性の検討が必要と認められた場合。まずは調査を開始したことを知らせる第1号を出し、評価検討会が「南海トラフ地震発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まった」などと判断すると、最短で2時間後に第2号を発表する手順となっている。

段階的に


 ただ、実際にどのような異常が検知されるかは分からない。

 中央防災会議の作業部会は、想定震源域のおおむね半分の領域でM8級が発生する「半割れ」、M7級が起きる「一部割れ」、揺れを伴わず異常な地殻変動のみ観測される「ゆっくり滑り」という代表的な三つのケースについて防災対応を検討。それぞれのケースが巨大地震につながる可能性は異なるため、段階的な対応策とする方針を打ち出している。

 最も危険性が高く対応が必要なのは、半割れケースだ。M8級の南海トラフ地震が現に発生した状況に相当するが、その直撃を受けなかった地域で後発のM8級に備えることを求めている。過去にM8級が短期間に「連動」するパターンが繰り返されてきた同トラフの特徴を踏まえたものだ。

 具体的な対応策は、(1)短時間で津波が押し寄せる沿岸部の住民があらかじめ避難する(2)企業が出火防止措置や従業員の安全確保策を講じる-などで、津波避難に関しては相模湾沿岸の市町も検討が必要になる。その一方、土砂災害の恐れがある地域からの避難は、対象者が多く混乱が懸念されるとして自主的な判断に委ね、耐震化されていない住宅の居住者に対しても、必要に応じて知人宅などに身を寄せるよう促すことにとどめる方向だ。

計画求め


 これに対し一部割れケースでは、住民や企業は地震の備えを再確認するなど警戒を強め、自主的に避難したり、あらかじめ検討しておいた対策を実施したりする。自治体は、知人宅への避難が困難な住民向けに避難先を確保するなどの対策を講じる。

 ゆっくり滑りは観測されても揺れを感じることはなく、津波も発生しない。そのため、住民や企業は警戒レベルを上げつつ、気象庁などが出す情報に注意を払うこととする。

 作業部会の取りまとめの骨子案では、臨時情報時にこれらの対応策を速やかに実行に移すため、防災計画をあらかじめ定めることを求めている。作業を支援するため、政府はガイドラインを策定する予定だ。

 計画作りの対象地域は、震度6弱以上や3メートル以上の津波などが見込まれる「南海トラフ地震防災対策推進地域」が基本となる。神奈川では、横浜、横須賀、平塚、鎌倉、藤沢、小田原、茅ケ崎、逗子、三浦、秦野、厚木、伊勢原、海老名、座間、南足柄、葉山、寒川、大磯、二宮、中井、大井、松田、山北、開成、箱根、真鶴、湯河原の27市町が該当する見込みだ。

 作業部会の主査を務める福和伸夫・名古屋大減災連携研究センター長は「まだ臨時情報という言葉がほとんど知られていない。この情報についてきちんと伝えていくことも重要」と現状の課題を指摘する。

自助のヒント 避難限度は「1週間」
 南海トラフ地震の警戒情報を巡る防災対応で、臨時情報の発表後に住民の避難などを実施して最も警戒する期間は、1週間程度が基本とされた。地震がすぐに発生しない事態もありうるため、避難勧告の継続などに対する住民らの受忍限度を考慮した。ただ、1週間経過後に一斉に防災対応をやめるのではなく、状況に応じて警戒レベルを下げることとしている。市町村を対象としたアンケートでは、避難生活のストレスに伴う健康問題や避難の長期化に対する住民の不満などに懸念が示された。

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