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帰ってくる「アリーテ姫の冒険」
賢く活発なお姫様描く 30年前にベストセラー 11月中旬から復刊版発売

  • 公開:2018/10/16 16:10 更新:2018/10/16 17:58
  • 神奈川新聞

 賢くて活発なお姫様の活躍を描いた児童書「アリーテ姫の冒険」(ダイアナ・コールス著)。30年前に男女共同参画センター横浜(横浜市戸塚区)の監修で翻訳出版され、今は絶版状態にある本書がこの秋復刊する。「女の子らしさ」の押し付けや女性への抑圧が現存する中、同センターの担当者はこの本を再び世に出す意義を呼び掛ける。「私たちはまだアリーテ姫が必要な世界に生きています」 
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 王女アリーテは暗い髪色のもじゃもじゃ頭。身にまとうのはドレスではなくズボン。頭にティアラは付いていない。「金髪できらびやか」「王子様に幸せにしてもらう」といった従来のお姫様と違い、持ち前の勇気と賢さで次々と目の前の問題を解決していく。

 「かわいらしく、おとなしく、従順に」。王様が娘に求める姿だが、読書好きで物知りなアリーテは、家庭教師にも自分の考えをはっきりと伝える主体性を持つ。「かしこい妻を求める男など、この世にいるわけがない」と、娘の結婚を切望する王様は彼女の賢さに頭を抱える。

 「子どもに読み聞かせる物語は古典や童話が中心だが、『シンデレラ』や『眠り姫』など、女の子が主人公の作品は王子様を待つだけの受け身な描写が多い」と、同センターの植野ルナさんは指摘する。一方、「桃太郎」をはじめ男子が旅などを通じて活躍する作品は珍しくなく、「性別役割がはっきり示される。アリーテのように能動的なお姫様が登場する児童書は今も少ない」。

 女子の合格者数を抑えるため、東京医科大が入試で女子に不利な得点操作をしていたことが明るみになったのは今年のこと。家庭や世間の女性への抑圧は現在においても、物語の世界に限ったものではない。

 「『自分は女性だから夫のように働いたら家事が回らない』などと、自分で性別役割の呪いにかかってしまっている女性から相談を受けることもあります」と話すのは、センターの菊池朋子館長。DV(ドメスティックバイオレンス)のケースを見ても対等な夫婦関係を築けず、「女性は男性を立てて当然」との価値観がそうした問題の一因となっているとみる。

 この現状からも、「女の子だからおとなしくいなさい、といった周囲の声を物ともせず、自分の好きなことを追求して生きるアリーテの姿は今の私たちにも貴重な示唆を与えてくれます」と、植野さんや菊池館長と復刊事業に携わったセンターの小林由希絵さんは強調する。

 1984年、海外に視察に行く横浜市のセミナーでロンドンを訪れた参加者が、現地の書店で本書の原本を購入。翻訳出版を目指し出版社に持ち込んだものの、「賢いお姫様の話は難しい」と断られた経緯があった。5年後の89年に横浜女性フォーラム(現・男女共同参画センター横浜)の監修で学陽書房からの刊行が実現。10万部を超えるベストセラーとなった。

 その後絶版状態となったが、復刊を求める声を受け、昨年夏に「『アリーテ姫の冒険』再び」と題したプロジェクトが始動。一部費用をインターネットで募るクラウドファンディングでは初日で当初の目標の30万円を達成した。復刊版は大月書店から、11月中旬に発売される。

 「自分の生き方やその価値は自分で決めていい。そのことをこの本を通じて伝えたい」と小林さん。人としての尊厳を取り戻せる、そんな一冊でもあると話している。

 通常版は1620円。識者の寄稿などを含めた復刊記念版は2592円。問い合わせは同センター電話045(862)5052。

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