愛情を伝えたくても 面会交流は今(2)別居親|カナロコ|神奈川新聞ニュース

特報

愛情を伝えたくても 面会交流は今(2)別居親

  • 公開:2018/04/01 11:10 更新:2018/04/01 16:42
  • 神奈川新聞

 「かわいいでしょ」。県央地域の男性会社員(40)は、小学6年になる長女(11)の写真の束を肌身離さず持ち歩く。旅先などで写された笑顔を1枚ずつめくる。この1年半の間、一度も会えずにいる愛娘(まなむすめ)を思わぬ日はない。
続きを読む

 15年前に元妻と結婚。しかしけんかは絶えず、元妻は幼かった長女を連れ、突然家を出た。1度はやり直すことになったがやはり分かり合えず、3年前から別居。離婚が成立した。

 支援団体を介さず、父母間で面会交流を試みたこともあった。しかし約束の日になり、元妻が「子どもが嫌がっている」とキャンセル。そんなことが何度も続き、結局この3年で長女に会えたのは3回ほど。2016年秋から会えないままでいる。

■ ■ ■

 離れて暮らす親子が会う面会交流は、離婚時の取り決め事項として、11年の改正民法で明文化された。しかし合意を義務づける規定はなく、親子が全く会えずにいるケースは多い。

 面会交流の可否や方法を巡り、父母間の話し合いで合意できない場合は家庭裁判所に調停を申し立てることができる。ただ、たとえ調停を通じて合意しても実現は当事者間に委ねられ、強制力はない。結局、離れて暮らす親子が会える保障はないのが実情だ。

 厚生労働省の調査によると、16年の面会交流実施率は母子家庭が約3割、父子家庭が5割弱にとどまっている。

 今年3月には、離婚などで子どもと会えなくなった県内在住を含めた父母ら14人が、面会実施のための法制度の不備を訴え、国に計900万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

■ ■ ■

 「娘に会いたい」。男性が申し立てた面会交流調停では、面会交流の実施まではかなわなかった。調査官による調査などから、長女は面会に消極的とされたことが一因だった。

 ただ、男性はそれが本心なのかと疑問に思う。長女の顔も見られず、直接話もできないままでは、その理由も分からない。元妻が日々、自分の悪口を長女に言っているのではないか、と疑ってしまう。「私のことが本当に嫌なのか、元妻を気遣っているのか分からない」。答えの出ない問いが頭をもたげる。

 昨秋、運動会を見に行った。普段見ることのできない頑張っている娘の姿を、応援したかった。父の存在には気づいていないようだったが、それでも遠くから顔を見られるだけで良いと思った。

 「『元気でいて』と思うしかない。せめて、生活の支えになれば」。これまで通り、養育費はずっと払い続けるつもりだ。

■ ■ ■

 子どものためとは何かを模索する親たちがいる。

 「ねえパパ、次はいつ会えるの?」「ごめんね。今、ママと話し合いをしてるから」

 長男の言葉に、都内の男性会社員(45)は胸が張り裂けそうになった。男性は月に1回、川崎市内の商業施設で、利用する支援団体の付き添いのもと、2人の子どもと面会を続ける。

 夫婦共働き、家事も育児も分担し、子どもたちに愛情を注いできた。しかしある日、妻が結婚前から抱える借金を知り、生活は大きく崩れた。男性も返済したが、関係は悪化。14年7月、妻は突然、幼い長男を連れ家を出た。おなかには新たな命が宿っていた。電話をかけてもメールを送っても無視され続けた。そのまま、数カ月の月日が流れた。

 「自分の子どもとある日突然、会えなくなる。当事者になって初めて、こんな問題があると知りました」。子どもに会いたい一心で方法を調べ、面会交流調停を申し立てた。

 調停中、何度も感じたのは「理不尽」だった。

 「どうしてパパはいないの?」。長男が家でそう問いかけていたこと。妻のおなかの中にいた長女の名前と誕生日。全ては調停の場で聞かされた。わが子を抱きしめたい思いは募り、かなわぬ現実との狭間(はざま)で苦しんだ。妻は「子どもを連れ去られる恐れがある」と主張し面会を拒否したが、月に1回、支援団体が付き添う2時間の面会で合意した。

 しかし、調停での合意に強制力はない。「熱が出た」などの理由で、5カ月連続でキャンセルされた。今年2月にも同様に断られたばかりだ。本当なのか、聞きたくても聞けず、受け入れるしかないという。「信じていないと思われれば、余計に仲がこじれる。それは子どものためにも良くないから」

 「綱渡り状態」。男性は現状をそう表現する。同居する親に拒絶されれば、いつ交流を断たれるか分からないからだ。

 長男は小学3年の8歳、長女は3歳になる。

 長女と初めて面会できたのは2歳の時。「娘からすれば僕は知らないおじさんだったから」、長女は戸惑い、一緒に遊べなかった。「パパだよ」と長男が手を引いてくれた。好きな電車の話をするなど一緒に過ごし、今は楽しい時間をともにする。「ねえ、パパ」。長女が初めて呼んでくれた時、言葉にならないほどうれしかった。

 この先どうなるかは分からない。成長とともに環境が変われば、子どもに面会を拒まれるかもしれない。その時はその時と受け止めたい。しかし、親子がつながる「綱」を断ち切られてしまえば、子どもの思いを知ることさえできなくなってしまう。

 「離れていても、子どもたちを大切に思っていることだけは伝え続けたい。親同士の都合で関係が断絶されれば、親子お互いの思いが届かなくなる。子どもにとって、悲しいことではないでしょうか」 

COMMENTSコメント

PR