新たな居場所、広がる縁 呼び寄せ高齢者ら集う|カナロコ|神奈川新聞ニュース

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新たな居場所、広がる縁 呼び寄せ高齢者ら集う
地域力 担う人々

  • 公開:2018/02/17 02:00 更新:2018/02/17 07:46
  • 神奈川新聞
 横浜市北部の一大生活拠点として開発された「港北ニュータウン」(同市都筑区)。一戸建て住宅やマンションが立ち並ぶ街には子育て世帯が多く暮らす一方、年齢を重ねて子どもの元へ転居した「呼び寄せ高齢者」が孤立しがちになっている。区内のカフェ「いのちの木」には、そんなお年寄りが集い、地域の子育てママや若者らも交えながら世代を超えたつながりを深めている。「新しい友達ができてうれしい」。おばあちゃんたちは編み物などを楽しみながら、茶飲み友達の来店を心待ちにしている。
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 市営地下鉄仲町台駅から徒歩2分のマンション1階。木のぬくもりを感じさせる店内には、ミシンや色とりどりの布、手編みの帽子やバッグなどがずらりと並ぶ。店が主宰する月2回の編み物サークルでは、おばあちゃんや子育て中のママら幅広い世代が集まり、思い思いに編み針を動かしたり、ひき立てのコーヒーを片手におしゃべりに花を咲かせたり。話は尽きず、笑い声が絶えない。

 「これ宮川さんが作ったの?」「すごく色がきれいね」。ピンクや緑など5色の糸で編み込まれた手作りのマフラー。店員やおばあちゃんらが手に取り歓声を上げると、サークルのメンバー宮川昌子さん(76)が頬を緩ませた。

 宮川さんは大阪出身。全国各地を転々とした後、横浜市内で暮らしていたが、夫の定年退職を機に2003年に群馬へ移住。夫婦でジャガイモやトウモロコシなどを育て、畑仕事に汗を流した。

 07年に夫をがんで亡くし独り暮らしに。10年12月に雪道で転倒し足を骨折したことをきっかけに、長男と長女が暮らす横浜市都筑区へ移った。「子どもたちにも生活がある。私も自立しようという思いだった」。しかし、家に独りでいても寂しさは募る。映画館や美術館に出掛けたが、孤独感は埋まらなかった。「人のぬくもりが恋しくてマッサージばかり通っていたの」

 11年秋、知り合いの勧めで「いのちの木」を訪問。集った人との会話が楽しくて通い始め、若い頃からの趣味だった編み物のサークルメンバーとなった。「新しい世界が広がる場所」。宮川さんはそう表現する。

 「楽しくおしゃべりするだけでなく、社会とのつながりもできた」と思える仕事に出会った。14年夏、店を訪れた女性ファッション誌編集者に依頼されニットのクラッチバッグを編むと、インターネットでわずか30分ほどで完売。その後、ブランド「ビヨンドザリーフ」が立ち上がり、商品作りに宮川さんらが参加している。1メートル超四方のブランケットを3カ月かけて納品し、いまは2作目を制作中。「目標に向かって挑戦することが張り合いになっています」

 何よりも多くの友達に出会えたことが幸せだ。サークルでは子育て中のママとも一緒に手を動かし、「編み物という共通の話題で年齢に関係なく楽しめるのがうれしい」。店員や来店する20代の男性は「宮川さん」と声を掛けてくれ、「『高齢者』でなく1人の『人』として向き合ってくれる人がたくさんいる」。

 鹿毛チヨカさん(84)は、50年以上暮らした福岡から長男が住む横浜へ昨年11月に引っ越してきたばかり。長男と訪れたカフェでの出会いに、新天地での生活を支えられている。

 「たくさんの電化製品を同時に使ったらブレーカーが落ちて、真っ暗になってしまって」。近くのマンションに独り暮らし。経験したことのない出来事に仰天し、店で知り合った宮川さんに思わず電話を掛け、助けられた。「びっくりしたわ、ごめんなさいね」「いいのよ、お役に立てて」。顔を見合わせ、笑みを交わす。

 「今が一番幸せですね」。鹿毛さんは繰り返す。いつも独りだった正月も今年は長男、孫、ひ孫らと過ごせた。カフェで出会った友人と交わした映画鑑賞や横浜・みなとみらい21(MM21)地区に出掛ける約束も楽しみだ。

 「知らない場所に来て、話し相手がいないのはさみしい。家族が近くにいて、新しいお友達もできて、福岡の友人も連絡をくれる。うれしいですよね」

 長く暮らした故郷はいつまでも心の中に残る。新たな街で生まれたつながりもある。それがうれしいと、おばあちゃんたちは言う。

 「独りで自宅にこもり、さみしい思いをしている方がいたら、お伝えしたい。ここがありますよ」

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