時代の正体〈126〉立ち上がる若者たち(下)信じる未来のため闘う|カナロコ|神奈川新聞ニュース

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時代の正体〈126〉立ち上がる若者たち(下)信じる未来のため闘う
 

  • 公開:2015/06/29 09:39 更新:2017/09/19 03:39
  • 神奈川新聞
SEALDsが国会前で行った抗議行動でマイクを握る慶応大の小林節名誉教授(中央)と奥田愛基さん(左から4人目)

SEALDsが国会前で行った抗議行動でマイクを握る慶応大の小林節名誉教授(中央)と奥田愛基さん(左から4人目)

 東京・渋谷のハチ公前広場、明治学院大4年の奥田愛基(あき)(23)がマイクを手に声を響かせた。
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 「デモなんかやっても意味ない、それより選挙に行けと言われる。でも、選挙のときに特定秘密保護法とか戦争法案とか、耳にしましたか? アベノミクス選挙だといって突然選挙をやった。その選挙では全体の2割しか自民党に投票していない。議会を軽視するような政権が出てきたときにはちゃんと街頭に出て、国民が声を上げなければいけないんです。だから俺たちはこうして街に出てきている。それくらい政治がめちゃくなことをやっているということなんです」

 もちろん選挙には行っている。でも選挙結果は民意を完全には反映しない。その認識が出発点だ。

 27日、学生団体「SEALDs」(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)が主催したデモ。国会審議が続く安全保障関連法案に反対の意思を示そうと「戦争立法絶対反対」「9条壊すな!」の文字がプラカードに揺れる。街宣車の上、言葉は次第に鋭くとがっていく。

 「安倍首相は国会審議でへらへらして『早く質問しろ』とか言い、人の生き死にに関わることを決めるのか。へらへらしながら自衛隊を戦地に送るのか」

 その背を押す一人の存在を奥田は思い出していた。

援 軍

 SEALDsが目指すのは安保法案の成立阻止。「この際、護憲派も改憲派も、保守も革新も関係なく、一緒になって戦争法案を止める」。毎週金曜日に国会前で続けるデモも特定の政党やイデオロギーにとらわれないからこそ参加者数は膨らんでいった。

 5日、大粒の雨の中、強行した最初のデモでのことだった。参加者のスピーチが始まってほどなく、スーツ姿の男性が傘を差してやって来た。

 依頼していたわけではない。奥田の声が上ずる。

 「いま一人、先生が来てくれました。小林節先生です」

 慶応大名誉教授。かつて自民党改憲派のブレーンだったことでも知られる。その2日前、衆院憲法審査会で安保法案について「憲法違反」と断じ、参考人として招かれた小林を含む憲法学者3人が全員「違憲」と指摘したことで波紋が広がっていた。

 小林は持っていた傘を放し、マイクを握った。

 「こんなひどい雨の中で集団的自衛権に反対していると聞いて多少なりとも応援にと、来ました」

 雨粒がしたたるメガネもそのままに、学生たちに語り掛けた。

 「こうして反対すると必ず言われることがある。『憲法を守って国が滅んだらどうするんだ』と。これに言い返せなければ、負けです。日本は戦後70年間、憲法9条と専守防衛でやってきた。専守防衛で身を守ることは世界の迷惑にならないということ。この先もこれでいける。間違って世界の警察などやってしまったらアメリカと同じになってしまう。経済的に滅び、世界中を敵に回すことになる。専守防衛は賢い防衛手段だということです」

 よどみない語り口に強い意志がこもる。

 「私も66歳の年寄り。君たちの世代のために、いいものを残さなければと闘ってきた。君たちも、さらに次の世代に責任を取るという思いで闘っていただきたい。頑張ってください」

 そう締めくくって、立ち去っていった。

 奥田は後日、思いがけぬ邂逅(かいこう)をツイッターで振り返っていた。

 〈小林節さん 片手が少し不自由だから、マイク持ったら傘持てないんだよね。それ初め分からなくて、マイク持ってもらったら めっちゃ濡(ぬ)れちゃって。けど全く動じず話し出して、スピーチして。超堂々とスピーチしてた。動画見たら分かるけど、メガネに水滴が垂れるぐらい雨降ってた中でだよ〉
 
 生まれつき左手の指がない小林。いじめられ、味わった孤独がその後の原点になっていた。小林がメディアに語っていた言葉を引き、奥田はつぶやいた。

 〈疲れてるのもあるけど、もうこれ電車の中でボロ泣き。「君たちはひとりじゃない、エネルギーは正しい方向に向かっているよ、と励ましたかった。僕がひとりで闘ってきたから、余計にそう思うのかな」 先生、俺マジで頑張ります〉

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