時代の正体〈125〉立ち上がる若者たち(上)憲法破壊本当に止める|カナロコ|神奈川新聞ニュース

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時代の正体〈125〉立ち上がる若者たち(上)憲法破壊本当に止める

  • 公開:2015/06/28 11:07 更新:2017/09/19 03:35
  • 神奈川新聞
国会前で行ったデモでマイクを握る奥田愛基さん=19日

国会前で行ったデモでマイクを握る奥田愛基さん=19日

 明治学院大4年、奥田愛基(あき)(23)は緊張の面持ちで、東京・渋谷のハチ公前広場に現れた。
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 27日午後4時。関心のなさそうな人、露骨に目障りだと払いのけるようにして通り過ぎる人、街宣車を見上げる人。

 奥田がマイクを手に取った。

 「何で僕らが渋谷の真ん中で街宣アピールやってるかっていうと、今の政治がめっちゃおかしいぞ、この戦争法案だけは絶対通しちゃいけないと思ったからです。僕は中学生の時に立憲主義を習った。権力を縛るために憲法があるってこと。でもそんなことが守られない政治がまかり通っている」

 2013年12月に設立した「SASPL」(サスプル)という学生団体で特定秘密保護法に反対してきた。これを衣替えし、この日のデモを主催した「SEALDs」(シールズ)という団体を立ち上げたのは今年の5月のことだった。安全保障関連法案の国会審議が始まろうとしていた。

 次第に熱を帯びる口調に聴衆が聞き入る。

 「法律を守らなかったら逮捕されちゃう。政治家がそれやったら首が飛ぶ。辞めさせなきゃいけないってこと。僕らは安倍首相を辞めさせなきゃいけないって思っているんです」

 安倍政権による集団的自衛権の行使容認も、安保法案も憲法違反だと訴えた。

民主主義、終わらせない


 奥田が熱い思いを吐き出したのは19日、国会前で行う3度目のデモだった。回を重ねるたびに群衆は膨らんでいき、働き盛りのスーツ姿も見られるようになった。

 「戦争反対」「安倍は辞めろ」の声が響く中、マイクを握った。

 「一つだけ言わせてほしい。聞いてますか、古舘さん」

 テレビ朝日の報道ステーションでメーンキャスターを務める古舘伊知郎を名指しした。

 「特定秘密保護法が可決されたとき、ニュースキャスターが『今日、民主主義が終わりました』と言っているってツイッターで知った。そのとき国会前で叫んでいた俺は、すげーつらい気持ちになりました。なんだよ大人って。いつ終わったんだよ民主主義。ふざけんなよって思った」

 報じる側の人ごとのような物言いが1年半余りも頭にこびりついて離れない。しゃべるうち、悔しさがこみ上げてくる。体を折り、腹から絞り出すようにして言葉のつぶてを放つ。

 「始まってるんですよ!新しい動きが。あのとき終わったんじゃない。あのとき始まったんですよ!」

 感情的になるのはダサイ。みんなも見ている。でも、止まらない。嗚咽(おえつ)が漏れ、熱い涙がせきを切って吹き出した。

 「絶対に諦めたくないんですよ。何で国民の自由とか民主主義とか憲法とか、あんなやつに終わらせられなきゃならないんですか。基本的人権の尊重と国民主権と平和主義を定めたこの国の憲法は、そんな簡単に終わるわけないんですよ」

 首相官邸は目の前だ。「あんなやつ」へ、声は届くのか。

 「いままで冷笑して簡単に言うやつら、見てろよ! 本当に止めるぞ。本当に止めるぞ。憲法守れ! 憲法守れ!」

立ち止まらない!


 その約1カ月前、戦後70年の憲法記念日を迎えた5月3日。渋谷駅近くのクラブでSEALDsの設立イベントが開かれていた。

 おしゃれに着飾った若者約80人がダンスミュージックとミラーボールの光の中にいた。メンバーの牛田悦正(22)が自作のラップを披露した。

 「Get Up! Stand Up!」

 起き上がれ! 立ち上がれ!と畳みかける。デザインに趣向を凝らしたチラシやパンフレット、メッセージを伝える動画に若い感性があふれる。従来の平和運動とは一線を画した「格好いい、軽いノリ」が流儀であり、誇りだ。

 それもしかし、見た目以上に時間のかかる作業で成り立ってもいた。大学の授業を受け、リポートを書き、ゼミにも出る。アルバイトにデート、友達と買い物にだって行きたい。

 奥田は明かす。「4年生なら就職活動だってある。この先の人生をどうするか、悩みを抱えながらやっているやつもいる」。理想と現実の間に挟まってもがく。前身のSASPL発足からおよそ1年半。奥田のフェイスブックには〈体が45個欲しい!〉という書き込みを見つけることができる。

 でも、立ち止まらない。

 

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