「望まない性交」の発生過程を調査している大学研究者らの研究チームが5月の中間報告で、被害者の多くが加害者との上下関係などから抵抗できない状況に追い込まれていたことを明らかにした。ただ、こうした実態は司法判断に反映されず、一部の無罪判決が問題視もされている。研究チームの報告と、勤めていた会社の経営者に性行為を強要された女性の声を通じ、刑事司法、そしてわれわれ社会の課題を考えたい。
望まない性交は、どういう状況下で起きるのか。オックスフォード大医療人類学研究室リサーチフェローの大竹裕子さん、目白大心理カウンセリング学科専任講師の齋藤梓さん、性暴力被害者らでつくる団体「Spring」の研究者らによる研究チームは、昨年5月から調査している。
被害者にインタビューしたほか、体験談を募り、望まない性交の発生過程を分析。その結果、加害者の大半は被害者の身近な存在か顔見知りで、日常的に上下関係をつくったり、被害者を抵抗できない状態に追い込んでいたりしたことが分かったという。
そこで浮かび上がったのは、「被害者が社会的に抗拒不能にされる」という構図だ。研究チームは、この構図が日本における性暴力の一つの特徴を示しているのではないかと推察する。
「抗拒不能」とは、身体的または心理的に抵抗することが著しく困難な状態を指すが、では「社会的抗拒不能」という状況はどのようにつくり出されるのか。研究責任者の一人、大竹さんは「被害者と加害者の関係性」に一つの要因があると説明する。