2018年に全国で発生した土砂災害の件数が3451件に上り、集計が始まった1982年以降で最多となった。国土交通省によると、7月の西日本豪雨(2581件)や9月の北海道地震(227件)で多発した影響が大きく、全国で計161人が死亡、行方不明となっている。都道府県別で最も多かったのは、広島の1243件。神奈川は32件だが、首都圏最多だった。
崖崩れや土石流などによる土砂災害の集計が始まった82年は、斜面崩壊が相次ぎ299人が死亡・行方不明となった長崎豪雨が発生。1年間の土砂災害の件数は2007件だった。
同年を上回り、これまでで最多だった2004年は2537件。台風の上陸数が観測史上最多の10個を記録。新潟・福島豪雨や福井豪雨などで自治体の避難対応が問題となり、水害対策の転機となった年だ。さらに、中山間地の斜面崩落で川がせき止められるなどした新潟県中越地震もあり、土砂災害を伴う深刻な災害が立て続けに起きた。
18年の件数は12月26日現在の速報値ながら、この1982年と2004年、東日本大震災と紀伊半島豪雨の起きた11年(1422件)などを越え、これまでの年別平均件数(1015件)の3・4倍に達した。
161人を数えた死者・行方不明者は、82年(337人)、93年(174人)に次いで3番目に多く、負傷者は117人。住宅の被害は全壊が420戸、半壊545戸、一部損壊478戸に上った。
18年の発生件数が都道府県別で最多の広島は全体の3分の1を占め、続く愛媛(419件)、北海道(237件)、山口(193件)、高知(171件)でも、西日本豪雨の際に土砂災害が起きた。北海道はさらに、最大震度7の地震で大規模な崖崩れが相次いだ影響も重なった。
神奈川では、県西部に高波や高潮の被害が集中した台風12号や暴風の影響が広がった台風24号などで土砂災害が発生。県砂防海岸課によると、32件の内訳は、横浜、横須賀、平塚、鎌倉の4市で各5件、川崎、逗子、三浦、南足柄の4市で各2件、相模原、小田原、座間、大磯の4市町で各1件。人的被害はなかったが、一部損壊となった住宅があるという。一方、東京、茨城、栃木は土砂災害が1件も発生しなかった。
自助のヒント 警戒区域で9割被災
土砂災害は豪雨や地震、噴火に伴って発生し、急傾斜地が崩壊する崖崩れ、土砂が一気に押し流される土石流、斜面がゆっくりとずれ落ちる地滑りなどがある。国土交通省によると、昨年9月末時点で、土砂災害の危険性が高い「警戒区域」に約54万2千カ所が指定。このうち特に大きな被害が出る恐れがあり、宅地開発などの制限を受ける「特別警戒区域」は約39万カ所。西日本豪雨の土砂災害による犠牲者のうち位置を特定できた人の9割が、警戒区域の指定を受けるなどして危険性が指摘されていた場所で被災していた。