3・11東日本大震災10年
浪江町任期職員・渡辺さん【下】 「防災は専門職」重視訴え
社会 | 神奈川新聞 | 2021年1月12日(火) 05:00
東日本大震災後、神奈川県から派遣された岩手県大槌町役場で5年間勤務し、現在は福島県浪江町で任期付き職員の渡辺善明さん(43)は、学生の頃から「防災」に関わり続けてきた異色の経歴の持ち主だ。災害の犠牲者をなくしたい─。そんな思いを胸に、長く過ごした“地元”の神奈川に今も浪江町から足を運び、旧知の災害ボランティアらと意見交換を続けている。
「わたなべよしあき 浪江町 銭湯めぐり」。主催者が用意した自己紹介用紙に居住地や趣味などを記すと、周囲から「浪江から?」と驚きの声が上がった。
昨年11月下旬、被災地支援などに取り組む認定NPO法人かながわ311ネットワークが横浜市港北区で開いた「防災教育ファシリテーター養成講座」。横浜や逗子、小田原などから参加した受講者の中に、渡辺さんの姿があった。「銭湯は災害時に欠かせない。趣味と実益を兼ねている」
12月半ばまで毎週末に4回連続で開かれた養成講座に、浪江町からそのつど駆け付けた。深刻な災害が起きるたびに必要性が強調される教育現場での防災学習を地域がいかに支援していくか一緒に考え、鎌倉・材木座の海岸を歩いて津波避難の課題を探った。
2019年4月から勤務する浪江町では、総務課防災安全係主査として防災施設の整備や職員研修、ハザードマップの見直しなどを担当。東京電力福島第1原発事故の影響で滞っていた備えの再構築に追われているが、神奈川で防災の行事があると、「業務の参考になる」と参加を重ねる。
原点は「奥尻」
浪江町任期職員・渡辺さん【下】 「防災は専門職」重視訴え
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防災教育の講座を受講し、参加者と意見を交える渡辺善明さん=2020年11月、横浜市港北区 [写真番号:475133]
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津波の直撃を受けた福島県浪江町立請戸小学校。震災遺構としての公開に向け整備中で、防災教育などへの活用が期待される=2020年12月 [写真番号:475134]