1世紀を経て、再びその名を知らしめたスペイン風邪。当時の報道をひもとき、コロナ禍を乗り越えるヒントを探った。

人が多く集まる場でのまん延、船内で集団感染、マスクの値上がりや学校でのマスク作り、飲食店などへの打撃─。これらは、いまだ収束の気配をみせない新型コロナウイルスについて伝えるニュースではない。約100年前、世界で猛威を振るった「スペイン風邪」について報じた神奈川新聞の前身「横浜貿易新報」の紙面に登場したものだ。当時の記事を読み進めると、予防策など二つの災禍に多くの類似点が浮かび上がる。
「有史以来の現象」
1918(大正7)年の横浜貿易新報を「流行、感冒」といったキーワードでたどっていくと、10月下旬からスペイン風邪関連の報道が目立ち始める。横浜の小学校で患者が約300人出て休校、と報じたのは10月24日。翌日には〈恐怖すべき悪性感冒〉として世界で日々数千人が死亡、と深刻さを伝えている。
続いて26日には、〈今度の悪性感冒は到底防ぎ切れぬ〉との見出しで、〈有史以来の現象〉と表現。会話した際に患者から出るつばの飛沫(ひまつ)からの伝染が多いとし、予防するには〈口や鼻を布片で覆ふ〉〈1日数回含嗽(うがい)を行ふのが一番よい〉と説いた。今と全く変わらない予防法が奨励されている。
貨客船で集団感染
100年前流行のスペイン風邪 新型コロナと類似点多く
スペイン風邪が流行し、マスク着用を呼び掛けるポスター。当時の内務省衛生局が作成したとみられる(国立保健医療科学院図書館所蔵、内務省衛生局著「流行性感冒」1922.3) [写真番号:357078]
1920年1月25日の紙面で掲載された挿絵。『親戚をどなた「様」かと聞くマスク』という文言が記されている [写真番号:357080]
スペイン風邪についての評論は、タッチパネルで読むことができる=大阪府堺市の与謝野晶子記念館(同館提供) [写真番号:357086]