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平和つなぐ 広島被爆75年
揺れる被爆建物(下) 遺族困惑「きれいすぎ」

社会 | 神奈川新聞 | 2020年9月13日(日) 11:49

レストハウスの地下室で被爆当時のまま残る柱を見つめる野村英夫さん

 被爆建物「レストハウス」は爆心地から南西約170メートルの、平和記念公園(広島市中区)の一角にある。市が台帳に登録している被爆建物の中で、原爆ドームに次いで爆心に近い。

 建設当時をイメージした淡いだいだい色の外壁が、ひときわ目を引く。扉の向こうには地元の特産品をそろえた売店が並び、2階はしゃれた雰囲気の喫茶スペースで、観光客が歩き疲れた足を休ませる。3階と地下1階には、被爆前や被爆直後の地域の様子などを伝える展示室がある。

 1929年に「大正屋呉服店」として建設された。モダンな外観は市内有数の繁華街だった当時の街中で異彩を放ち、戦時中の広島と呉を舞台にしたアニメ映画「この世界の片隅に」でも往時の姿が描かれている。戦時中に発令された国の繊維統制令によって閉鎖され、広島県燃料配給統制組合が44年6月に事務所として取得。「燃料会館」と呼ばれるようになった。

 45年8月6日。原爆投下で、地下室を除いて全焼。57年3月、かろうじて原形をとどめた建物を市が買収し、東部地域の復興拠点として使った。その役目を終え、82年からは観光客向けのレストハウスとして親しまれている。

 市は老朽化した建物を約2年半、9億円超をかけて大規模改修し、今年7月1日にリニューアルオープンした。呉服店の外観に近づける一方、より洗練されたデザインを内装に取り入れた。

 大きく生まれ変わった施設を訪れた野村英夫さん(86)=同市中区=はしかし、周囲をぐるりと見回し、思わず表情をゆがめた。

 「きれいにしすぎや。これじゃあ、戦争の悲惨さは伝わらん」

 
 

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