自民党の甘利明前行革担当相(比例南関東)に対して民主党が懲罰動議を出したことが政界に波紋を広げている。甘利氏が一貫して人員削減など公務員制度改革を主張し、野党サイドから「官公労(公務員系労組)の天敵」と評されることと関連づける見方も。「参院選をにらんだ口封じ」との批判も出始めた。
「政権を得ながらどうして後退した案しか示せないのか!」(甘利氏)
「それなら、なぜ変えずに来た!」(仙谷由人公務員制度改革担当相)
4月9日の衆院内閣委員会。国家公務員法改正案審議で新旧の行革担当者が激突し、答弁席から質問が飛ぶ珍事が起きた。かつて攻撃対象だった甘利氏から、自分たちが浴びせた批判の数々をブーメランのように返され、切れた瞬間だ。
甘利氏を「同じようなことを繰り返し聞きしつこい」と評する民主党議員は「弾みであれ、けが人を出しておいて、登院しようとするのはいかがか」と断じる。同氏が現政権にとって煙たい存在であることの裏返し。会期末の重要法案審議で同氏からの質問がなければ、スムーズに乗り切れるとの思惑ものぞく。
実は甘利氏と民主党、とりわけ同党の有力支持組織である公務員系労組との対立は10年以上も前にさかのぼる。当時の小渕恵三首相が緊急雇用対策の一環として、省庁や自治体による直接雇用を容認しかけた際に反対し、押し返したのが当時労相の甘利氏だった。
「ひとたび雇用すれば撤退に苦労する」というのが理由。閣内からの予想外の反論に官公庁や労働界は仰天し、当時の自治労幹部からは「組合員の負担軽減や組織拡大の好機をつぶされた」との怒りが聞かれた。「懲罰動議は田中慶秋委員長(衆院5区、民主党)への解任決議と、これまでの甘利氏の姿勢に対する反撃」(自民党幹部)との憶測が出るゆえんだ。
今回の懲罰動議では「12日の衆院内閣委員会で委員の甘利氏が突き飛ばした民主党の初鹿明博氏との玉突きで同党の三宅雪子氏が倒れ、打撲を負った」としている。両氏は同委員会を傍聴していたという。
当の甘利氏は今回の騒動についてブログで「はめられた」と説明。報道陣の取材には「そもそもなぜ委員外議員が傍聴席を離れ、委員会室の内側に出てきていたのか分からない」とした上で、「小沢一郎幹事長の政治とカネの問題など、自分たちのけじめをつけられない政党(民主党)からけじめを求められ、驚くばかりだ」と話している。
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