「こんなに静かな箱根は見たことがない」。箱根町の幹部は6月、新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けた町内の観光業をこう語った。昨年は箱根山の噴火警戒レベルの引き上げや台風19号の被害で、観光客数が前年比230万人(10・8%)減の1896万人と落ち込んだが、今年はさらに悪い見通しだ。
町はこれまで東京五輪・パラリンピック開催に伴う訪日外国人客(インバウンド)の増加を見据え、町総合観光案内所の多言語対応や無線インターネット環境の整備を進めてきた。国内客向けにはプレミアム付きクーポン券の発行などで誘客を図ってきた。
しかし今年3月、五輪の延期が決まり、4月の緊急事態宣言で町内の観光施設は軒並み休業。町外に向けた「箱根ブランド」の強化を目指していた町は一転、地域商品券や宿泊クーポン券発行などで観光事業者らへの支援に追われた。
5月の宣言解除後から各施設は営業を再開し、徐々に客足が戻ってきた。10月時点では「日帰り客に限れば平年並み」(同町湯本の物産店)まで回復したとの声も聞かれるが、宿泊客は依然厳しい状況だ。