
定泉寺(横浜市栄区)の境内にある「田谷の洞窟」(田谷山瑜伽洞(ゆがどう))の内部を3次元データ化し、保存する取り組みが進んでいる。風化や劣化が進む貴重な史跡を、後世まで残すことが目的。資金の一部をクラウドファンディング(CF)で募り、2020年までの完成を目指す。
この洞窟は、真言密教の修行道場として鎌倉時代初期に開かれたとされる。内部は3段構造で複雑に入り組み、全長は570メートル。壁や天井には数百年にわたって修行僧らが彫ったレリーフ状の仏像や竜、梵字(ぼんじ)の曼荼羅(まんだら)などが残り、市の登録地域史跡にもなっている。
活動を担うのは、田谷の洞窟保存実行委員会。15年夏に、委員長で設計事務所代表の田村裕彦(やすひこ)さん(47)と、定泉寺副住職の渡辺隆人(りゅうにん)さん(50)が、洞窟内の補修工事を機に知り合い、計画が始まった。
内部の彫刻には、壁の劣化で一部が失われたり、表面が白く変色したものもある。同寺はこれまで多額の費用をかけて補修してきたが、維持管理は簡単ではない。渡辺さんは「彫刻は信仰の対象。おいそれとは触れられないし、元に戻すことも難しい。風化や劣化がこれ以上進む前に、現状を残したい」と話す。
計画では洞窟の内部を3Dスキャンし、バーチャルリアリティー(仮想現実)データとして保存する。データ映像は立体的で、スマートフォンなどで360度を見ることができる。スマホでのアプリ展開も検討している。
CFの目標金額は120万円。近く予定している、専門家らの本格的な基礎調査の資金にする。田村さんは「データ化すれば実際に来られない人も見ることができ、誰にでも開けた場として洞窟が継承できる。地域に役立つ形で記録保存ができれば」と期待を込める。
CFは、「CAMPFIRE」のサイトで29日まで実施している。問い合わせは、田村さんのメール(tytamura2@nifty.com)。
