人気と実力を兼ね備えるチェリスト伊藤悠貴とピアニスト上原彩子によるデュオ・リサイタルが13日、横浜みなとみらいホール(横浜市西区)で開かれた。プログラムは全てラフマニノフ。チェロの歌う楽器としての魅力を存分に発揮した素晴らしい舞台だった。
ラフマニノフ研究家でもある伊藤は、プログラムに掲載された楽曲解説を全て自身でつづった。編曲も手掛けるため、交響曲第2番の第3楽章をチェロ版に編曲して披露。世界初演という貴重な場になった。
ラフマニノフが遊びで弾いたメロディーを、親交が深かったチェリストのアリトシューレルが記譜したという「ラフマニノフのテーマによるメロディ」は、日本初演。歌曲などを編曲して連作とした「6つの祷(いの)り」など、ラフマニノフの知られざる名曲を広めたいという伊藤の意欲が示された。
チェリストを目指すきっかけになったという「チェロ・ソナタ」では、抑制を利かせた中に情熱あふれる圧巻の演奏で会場を魅了。上原もCD「ラフマニノフ13の前奏曲」をリリースするなど造詣が深く、真摯(しんし)な音作りが印象的だった。
伊藤は作曲家の雁部一浩と共演したCD「伊藤悠貴/雁部一浩歌曲全集」(ディスクアート、3300円)=写真=をこのほどリリース。室生犀星や石川啄木による詩歌の世界を豊かに表現している。
音楽監督兼常任指揮者に就任予定だった神奈川県央管弦楽団の発足は、コロナ禍で中止に。来年は神奈川フィルハーモニー管弦楽団との共演が予定されており、活躍が期待される。