18日から横浜ブルク13などで上映。
新天地での華やかな生活を夢見て移住した老夫婦が思い通りにいかない現実に直面し、お互いの愛情と絆を試される、大人のコメディー作品。今年生誕100周年を迎えたフェデリコ・フェリーニ作品のほか、数々の名作映画がアクセントとして使われており、監督の映画愛が伝わる。
1990年、崩壊間近のソ連でハリウッドやヨーロッパ映画の吹き替え声優として活躍していたビクトル(ウラジミール・フリードマン)=写真左=とラヤ(マリア・ベルキン)=同右=の夫婦はイスラエルに移住。自慢の声を生かして働くつもりが、イスラエルでは声優の需要がなかった。
生活のため、ラヤは「香水の電話セールス」とビクトルにうそをつき、欲求不満の男性の電話を受けるいかがわしい職に就く。一方、プライドを捨てられずアルバイトが続かないビクトルは違法な海賊版レンタルビデオ店で声優として働き始める。生活は安定したかに見えたが、頑固でマイペースなビクトルに愛想を尽かしたラヤは、つい顧客の男性と会ってしまう。
舞台俳優のオーディションでマーロン・ブランドになりきるが「自分自身の表現で」と駄目出しをされ、しょげるビクトル。「声優」という設定が効いている。「他人のせりふならうまく言えるのに、自分の心は伝えられない」とこぼす彼が、ラヤに気持ちを伝える場面は涙を誘われる。
監督/エフゲニー・ルーマン
製作/イスラエル、1時間28分