27日から川崎チネチッタと横浜ブルク13で上映。
2014年4月16日、修学旅行中の高校生ら300人以上が犠牲になった韓国のセウォル号沈没事故。遺族の元でボランティア活動を続けてきたイ・ジョンオン監督自身の体験から、同事故を初めて正面から取り上げ、悲しみに寄り添う温かな作品が生まれた。
事故の犠牲となった高校生の息子スホを恋しく思いながら、娘と暮らすスンナム(チョン・ドヨン)=写真右端。海外赴任中のある出来事のため、息子が亡くなった日に父親としての役目を果たせなかったジョンイル(ソル・ギョング)=同左端。罪悪感を抱えたまま帰国するが、スンナムはかたくなな態度を崩さない。大きな喪失感と共に家族は不安定な日々を送っていた。
そんな中、スホの誕生日会を遺族の支援者やスホの友人たちが提案。スンナムは息子の不在を突き付けられるようで拒否し続ける。だが、スホの記憶を共有し、悲しみを分け合うことが、生きていく糧になると気付いていく。
子に先立たれた切なさと身を切るような悲しみを、両名優が切々と表現することで、真に迫るものとなった。
クライマックスとなる誕生日会のシーンは、約30分にわたるロングテイクを3台のカメラで撮影し、俳優らの生の感情を引き出した。
一人一人が語るスホの思い出に胸が熱くなると同時に、現実にこうした記憶を抱いて毎日を過ごしている多くの家族を思った。
イ・ジョンオン監督
製作/韓国、2時間