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「自分に呪いかけないで」 虐待被害者の言葉

社会 神奈川新聞  2018年03月01日 10:44

一つずつ言葉を選びながら話してくれた「そらさん」
一つずつ言葉を選びながら話してくれた「そらさん」

 両親などから受けた虐待の体験をまとめた書籍「日本一醜い親への手紙/そんな親なら捨てちゃえば?」(クリエイトメディア編)には100人の手紙が収められている。「惨殺したい」「生き抜いてみせる」。憎悪、悲しみ、決意。血が噴き出してくるような言葉が並ぶ。県内で暮らす「そらさん」(49)は、幼い頃に義父から受けた性虐待について言葉をはき出していた。

 そらさんは色白で、時折見せる笑顔が印象的な女性だ。本人も「周囲からは天真爛漫(らんまん)で悩みなんかなさそう、と言われます」と穏やかに語る。

 そんな女性が「罪に問われない殺人者」のタイトルで、同書に3ページにわたり“叫び”をつづった。

 あなたにとっては、自分の欲望を満たすためのちょっとしたいたずらだったのでしょう。でも、いたずらなんて軽い言葉ではすまされない。私みたいな人やまわりを傷つける凶器みたいな人間を作り出すのは、あなたのような魂の殺人者です。

 小学4年の時。プロレスごっこの最中に、義父は下着の中に手を入れてきた。何をされたか理解できなかったが、幼いながら「これは誰かに話してはいけないこと」と悲しい気持ちを瞬間凍結した。

 うれしいことも、楽しいこともある日常。血が流れている心の中で、痛みを凍結し続けることは簡単ではない。「エネルギーを注がないと、端から解けだし、無神経に傷つけられた時のにおいがしてくる」。そらさんは今、そう表現する。

演じた「いい子」



 そらさんが4歳の頃、実の父親は浮気相手との間に子どもをつくり、家を出ていった。母は義父と再婚するまでの間、4人姉妹を女手一つで育ててくれた。

 義父は事業をしており、つつましく暮らしていた家族が知らなかった世界を見せてくれた。幸せを壊してはいけない。通知表の長所欄で「優しい子」と評価されていたそらさんは、いい子を演じると決めた。

 なかったことにして生きる。現実にある苦しみを切り離すために「これはドラマの撮影なんだ」と想像の世界に逃げ込んだ。

 閉じ込めた気持ちがあふれた中学1年の時、自殺を図った。運ばれた病院で医師から「こんなことしちゃだめだよ」と諭された。腫れものに触るような接され方に、孤独が募った。「ただ、気にしているよ、と言ってほしかった」

「透明」に安堵感


 痛みを他者へ。牙として向けたのは、中学2年の時だ。「死にたい」「殺してやる」。やっとの思いで口にした感情の奥には「(死にたい)くらいつらい、という言葉が隠れていた」と不安定だった時期を分析する。そんな思いに母は気づかず「あんたを殺して、私も死ぬ」と泣いた。

 急変したそらさんを、車で海に連れて行き「何か嫌なことがあるの」とたずねた先生がいた。「そんな簡単には言えないよ」。差し伸べられた手をつかめず、生まれた言葉を自ら消した。いい子から、非行少女へ。かぶる仮面を変えた。

 誰かに殺してほしいと望んでいた。夜の街をうろつき、見知らぬ男にレイプされた。

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