SUGIZO「決めた覚悟」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

SUGIZO「決めた覚悟」

結成26周年を迎えたLUNA SEAのギタリスト〈7〉

1990年1月8日、拠点にしていた「町田プレイハウス」で=SUGIZO提供

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 --トントントントン。

 腰掛けているSUGIZOの長い指が、ゆったりと空を踊っている。小指から、薬指、中指、人差し指が順にテーブルをたたく。空気をかき混ぜるように動く指は、口を結んで周囲を見渡すSUGIZOとは違って饒舌だ。

 --トンタタ、トントントン。

 「状況はどうかな」「待ち人はどうしているだろうか」。少し速くなったリズムはそう言っているように聴こえた。

 ギターやバイオリンで心を表現してきた肉体は、触れたものに色を与え、音符を生み出してしまう。マッチ棒の頭薬でマッチ箱の横薬をこすると、その摩擦で火が生まれるように。音の魔法をかけるのだ。

 肌に似た感覚があった。それは、2014年4月10日。読売新聞社が社屋の中に建設した東京・よみうり大手町ホールでのこと。同ホールではこの日、作家の辻仁成が芥川賞を受賞した「海峡の光」の舞台リハーサルが行われていた。同作で音楽を担当したSUGIZOは、早朝まで修正していたという音楽を携え、うっすらと赤くなった目をサングラスで隠し、翌日の本番に向けて汗を流す演者たちを見つめていた。

 18年ぶりに再会した同級生を軸に展開する物語。いじめっ子と、いじめられっ子だった二人は、北海道・函館の刑務所で、傷害事件を起こした新入り受刑者と、刑務官として同じ空間で時を重ねることになった。制限された生活の中で、耳をくすぐる波の音、空を羽ばたくカモメの声は、堀の中と外にある見えない壁を浮き彫りにした。男だらけの日常、「唯一、惚れた」という女との愛欲の日々を語る異分子は、みだらな欲望を抱かせた。雑居房の中にわき上がる衝動。SUGIZOは、受刑者たちに揺れ動く心を手拍子で表現することを求めた。

 「音に合わせて、こういう感覚で」とSUGIZOが左右の手を合わせたとき、空間に色が見えた。タンタンタンタン--。繰り返し、繰り返し、繰り返し、手を打っていく。SUGIZOのリズムに合わせ、演者も手を合わせる。打つごとに上がる体温。火打ち石を重ねたとき、散る火花のような熱が、そこに生まれていた。

 冒頭記したSUGIZOがテーブルを指でなぞっていたのは、2014年11月28日。東京・代々木であった辻のコンサートを訪れていたときのことだった。ブルースのように言葉を投げかける辻のライブは、言葉が引っかかると、集団の中にいてもシュッと一人の世界になる。禅に似ているといつも思う。「どこから来たの?」「どこに行くの?」。私は知っている。目黒の自宅を出てここまで来て、またあの部屋に戻ると。でも--。本当にそうなのだろうか? 言葉はさらに続く。「生きているのか死んでいるのか 分からなくなっているいまの自分……」。生きるとは何だろう……。

 ステージを終えた辻が、SUGIZOのもとにやってきた。多くの言葉は交わさなかったが、通じていることはよく分かる。横に座った辻の熱を左半身で受けながらいるSUGIZOは「辻さんはやっぱり詩人だよね。僕は音を構築することはできるけれど、辻さんのようには絶対になれないから。あこがれなの」と口を開いた。青い炎、真っ赤な炎。色は違うかもしれないけれど、二人はいつも燃えさかっている。

 別れのとき。SUGIZOは12月21日に決まっていたLUNA SEAのライブのことを指し、辻に「じゃぁ、次はさいたまスーパーアリーナで!」と声をかけた。「うん」と応えた辻。黒の上着をひるがえし去っていくSUGIZO。その背中に辻は「いいなぁ、かっこいいなぁ、オレも言ってみたいなぁ」と弾んだ声で言った。顔をのぞくと、恋い焦がれる少女のような目をしていた。音の世界で通じ合う二人は、再び共演することを約束している。【西村綾乃】

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