教科書の中に私はいない 「多様な性」想定を|カナロコ|神奈川新聞ニュース

教科書の中に私はいない 「多様な性」想定を

同性愛者の切実な訴え

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2015/05/28 10:25 更新:2017/06/06 21:34

悪循環を絶つとき


 室井さんが必要としていたのも自己肯定の機会だった。高校卒業後に出会った同い年の友人がレズビアンであることを公言する姿を目の当たりにした。「自分が認められない、隠したい、恥ずかしいと思ってきたものを堂々と語り、肯定していることがかっこよく見えた」

 かつて自分を傷つけたレズビアンという言葉を口にすることにためらいがあったが、カミングアウトを重ねるうち、「同性愛者という以前に、室井という一人の人間を見てくれていると実感できるようになっていった」。

 ある日、父に「付き合っている人がいます。その人は女の人です」と告げた。何十回も頭の中で繰り返したフレーズだった。

 「そうか。人に迷惑をかけなきゃいいんじゃない」

 意外とそっけなく、しかし、かえって温かくもあった。

 母は数秒間、固まった後、「あなたが幸せならそれでいい」。そして「その道を歩くのは大変だよ」と続けた。否定されなかった、というだけでよかった。背負っていたものが軽くなった気がした。24歳になっていた。

 小中学校、高校の教育内容を決める指導要領が改定されるのは、ほぼ10年に1回。次回は16年度に迫る。これを逃せば、また10年同じ教育が繰り返され、性的少数者の子どもたちの苦しみは続く。

 4月下旬、文科省が性的少数者の子どもへのきめ細かな対応を求める通知を出すなど時代の変化を感じる室井さんは「今こそ悪循環を絶つとき」と力を込める。昨秋から始めた署名キャンペーンには現在1万6千人以上が賛同している。来年まで続け、同省や教科書会社に届けるつもりだ。

 室井さんがあらためて訴える。「異性愛を前提としたいまの教科書の記述は多様な性を想定していない」。性的少数者は人口の3~5%いるとされ、クラスに最低1人はいる計算となる。1人だからこそ目を向け、孤立の淵(ふち)から救い上げてほしいと願う。「学校で教わることを基本的な常識として学ぶ子どもにとって先生の言動や教科書の影響力は絶大だから」

 
◆性的少数者 同性愛者のゲイやレズビアン、両性愛者のバイセクシュアルや心と体の性が一致せず違和感を覚えるトランスジェンダーの人たち。それぞれの頭文字を取って「LGBT」と総称される。他者に恋愛感情と性的欲求を抱かない無性愛者や自身を男性とも女性とも思わないXジェンダーなども含まれ、性的マイノリティーやセクシュアル・マイノリティーとも呼ばれる。7万人を対象に電通総研が2012年にまとめた調査では、日本の成人男女の約5・2%に上る。欧米では人権保障の観点から問題意識が広がり、日本でも性的少数者によるデモが行われるようになり、東京都渋谷区が同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めて証明書を発行する条例を制定するなど関心が高まりつつある。

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