教科書の中に私はいない 「多様な性」想定を|カナロコ|神奈川新聞ニュース

教科書の中に私はいない 「多様な性」想定を

同性愛者の切実な訴え

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2015/05/28 10:25 更新:2017/06/06 21:34
 〈クラスに必ず1人いる子のこと、知ってますか? セクシュアル・マイノリティの子どもたちを傷つける教科書の訂正を求めます〉。インターネットでそう呼び掛ける署名運動が賛同の輪を広げている。異性愛を前提とした教科書の記述の修正を文部科学省と教科書会社に求めている。「教科書の中で私は『いないこと』にされている」。呼び掛け人で同性愛者の女性は孤影を引きずり生きてきた。

 10年以上も前のことなのに、自身へ向けられたその言葉を忘れない。

 「レズかよ」

 あざけりとさげすみの響きが室井舞花さん(28)の耳奥に残る。

 中学2年生のころ、好きになった相手はクラスの女子だった。2人で連れ立っていることも多く、周囲から疑いの目で見られた。「どういう関係なの?」。そして決定的な一言が。「レズかよ」。慌てて否定したが、いつかばれるのではないかというおびえで胸がつぶれる思いだった。

 テレビ番組に登場する「ニューハーフ」と呼ばれる人たちは見せ物のような扱いだった。担任教師は「おれ、ホモじゃないし」とおどけ、教室中の笑いを誘った。

 そして保健の教科書を開き、息をのんだ。

 〈思春期になると誰もが異性への関心が高まるようになります〉
 自分は間違っているんだ-。

 同性愛についての記述は見当たらず、教科書を読めば読むほど存在が否定されていると感じた。

 同性が好きな人は周りにいなかった。親の会員証を持ち出し、こっそりビデオを借りた。性同一性障害者を描いた米国映画「ボーイズ・ドント・クライ」。主人公が殺される結末に「女の子が好きな自分に未来はない」と感じた。

 やがて芽生えた「世間が思う普通」になりたいという感情。男子を好きになろうとして交際したこともあったが、「当時の記憶がない」。偽りの自分を演じても孤独は深まるばかりだった。

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