大江千里「選ばなかった扉の向こう」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

大江千里「選ばなかった扉の向こう」

旬漢〈4〉

25日に横浜でライブを行う大江千里さん

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 2008年。大江千里(54)は25年間積み重ねたキャリアを捨て、愛犬だけを連れて、米ニューヨークに渡った。

 それは友人や知人を見送ることが増えていった47歳のとき。経験も技術も十分に脂が乗り、シンガー・ソングライターとしての地位を不動のものにしていたが、人生の曲がり角に立ち、「このままでいいのか」「やり残したことはないか」。焦りに似た感情がわいた。

 3歳で始めたクラシックピアノは、小学3年生まで続けていた。「男がピアノをやるなんて」という好奇の目がイヤで音楽に背を向けた。空いた時間は野球に注ぐなどしたが、カーペンターズの音に触れ、未知のフレーズにときめいた。「この音はどうやって出すんだろう」「どうやって弾いているんだろう」。再び向き合った鍵盤。大阪・ミナミにある若者文化の発信拠点・アメリカ村にある中古レコード屋に入り浸り、出合ったのがジャズ。ウィントン・ケリーやビル・エバンスなどのレコードを〝ジャケ買い(ジャケットのイラストや写真など、見た目で盤を購入すること)〟し、本場ニューヨークに思いをはせた。

 「自宅のピアノからは出ない音がある」「ジャズの音のからくりを学びたい」と藤井貞泰の教則本を見て、ジャズの世界に飛び込もうと決心。しかし、大学在学中に受けたオーディションをきっかけに、シンガーとしてメジャーデビューの切符をつかんだ。「もともと目の前のことに全力投球するタイプ」。1983年5月にシングル「ワラビーぬぎすてて」、アルバム「WAKU WAKU」でプロとして始動すると、Jポップの世界に身を置きシーンを引っ張ってきた。

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