スキマスイッチ「伝わる波動」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

スキマスイッチ「伝わる波動」

旬漢〈3〉

スキマスイッチ(左から)鍵盤の常田真太郎と、ボーカル・ギターの大橋卓弥

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 ボーカル・ギターの大橋卓弥(36)と鍵盤の常田真太郎(37)なるデュオ「スキマスイッチ」。ふたりの作品に触れると、音は振動、それを伝える力は波動だと感じる。ふたりが紡ぐ音、言葉は巧みで、それは聴き手によって色を変える。ふたりは「それでいい」のだと言う。だからこそ音に乗せる言葉には深いこだわりがある。【西村綾乃】

 2013年7月にデビュー10年を迎えた。「曲は聴き手の中で成長し続ける」。観客の反応をライブで感じたとき、手紙など寄せられた言葉で、それをかみしめている。代表曲「奏(かなで)」は遠距離恋愛をテーマにしたが、娘の結婚式で父親が門出の曲として歌うと知らされ、「曲や歌詞の受け止め方はそれぞれのもので、僕らが思ってもいなかった形になって戻ってくることもあるのだ」と実感した。

 同じレーベルの大先輩である小田和正に「作詞作曲には、君が生きた24時間を入れなさい」と助言されたことがある。「映画を観て、ご飯を食べて、電車に乗って、旅行に行って…。聴き手と変わらない日常が僕にもある。特別じゃない、日々の暮らしの中にある輝き。僕の言葉はどこにあるのか。いまもふと筆が止まる」。大橋がつぶやいた。

 シングル「ボクノート」(2006年)では、「考えて書いてつまずいて消したら元通り 12時間経って並べたもんは紙クズだった」と制作の苦悩を記した。でも「迷い立ち止まった自分自身も信じていたい」「もがいている自分も全部僕」だとし、最後に、「耳を澄ますと確かに聞こえる“僕の音”」と闇に差し込んだ光をしっかりと含めた。韻を踏む。言葉のマジックは、行間にも込める。大橋が喉を震わせ歌う言葉は脳に、心に。広がる波紋は聴き手が身体全部で受け止める。そのとき体内で何かが起こる。刻まれた声、思い。それによってわき出てくる聴き手の記憶。だからこそ。大切なことは「曲の人格を届けること」と力を込める。

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