別の依存へ予断許さぬ 危険ドラッグ「クロス・アディクション」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

別の依存へ予断許さぬ 危険ドラッグ「クロス・アディクション」

危険ドラッグを含めた薬物依存症からの脱却を目指すプログラム「SMARPP」に参加する患者ら =県立精神医療センター


 だが、医療現場では、危険ドラッグ依存症の初診患者数の減少傾向を楽観視してはいない。

 同センターでは実際、危険ドラッグ患者がほかの依存症に移行する「クロス・アディクション」が見られている。危険ドラッグをやめて大麻を使い始めたり、アルコール依存症に陥って入院したりした患者もおり、一時期減っていた覚せい剤依存症患者も再び増加傾向にあるという。

 同センターでは危険ドラッグをはじめ薬物の再使用を防ぐためのプログラム「SMARPP(スマープ)」に力を入れている。通院者や外来患者を対象に週1回約2時間ずつ続け、16週と24週のコースがある。

 プログラムではワークブックを使いながら、依存している薬物がなぜ危険なのか、再使用の引き金は何か、どのようにして再使用を避けるかなどを学ぶ。グループのメンバー同士でそれぞれの体験も語り合いながら、仲間とともに断薬を継続するのが目的だ。

 取材に訪れた3月上旬の回のテーマは「休日と回復」。通院中の男性5人が参加し、看護師の主導でワークブックを順番に音読した後、「飲み会などで過去の仲間と再会したら薬を使ってしまいそう」「休みの日に孤独や寂しさを実感すると薬を使いたくなる」などと、それぞれが抱える休日の問題を話し合った。途中の休憩時間には尿検査も行い、断薬の継続も確認した。

 薬物依存症の治療に長年かかわってきた小林医師によると、以前から処方薬や市販感冒薬など合法薬物の依存患者は一定数いたという。「違法性の低い薬物への潜在的なニーズがあったからこそ、危険ドラッグが急速に流行したのではないか」と分析する。

 その上で「注目すべきは薬物の種類ではなく、逮捕されにくい薬物を必要とする“良い子”たちが増えてきていることだ」と強調。「取り締まりによって依存症が治るわけではない。依存症の背景にある孤独感や生きづらさに目を向け、適切なケアをしなければ、違う薬物や依存症に逃げるだけ」と警鐘を鳴らし、再使用防止に向けた治療や相談の必要性を呼び掛けている。


治療施設の少なさ課題 各地で独自規制条例制定

 危険ドラッグはかつて「脱法ハーブ」などとして販売されていたが、近年はその多くが違法薬物に指定され、昨年4月には販売だけでなく所持も禁止されるなど規制が厳しくなっている。

 全国各地で独自の規制条例制定も相次ぐ。神奈川県も独自に危険ドラッグなどを規制する条例を4月から施行。国が違法薬物と指定するのを待たずに知事が独自に指定し、販売や所持を禁止するほか、県警への販売店舗立ち入り調査権の付与、緊急時の店への販売中止勧告などを行う。

 県警も3月に「薬物乱用防止総合対策プロジェクト」を発足させ、違法薬物の販売実態の把握や取り締まりを強化している。

 規制強化が進む一方、危険ドラッグなどの薬物依存症患者の治療ができる施設は全国的に少なく、課題になっている。

 厚生労働省はSMARPPを中心とした認知行動療法プログラムを全国の精神保健福祉センターのうち50カ所強で実施できるよう、本年度から助成制度を開始。家族支援もモデル事業で始める予定だ。同省は「全国どこでも効果的な治療を受けられる体制を整え、薬物の乱用防止につなげたい」と話している。

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