自転車転倒で死亡、男性に無罪「自転車に徐行義務」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

自転車転倒で死亡、男性に無罪「自転車に徐行義務」

自転車の男性が転倒し、死亡した交差点。男性は左側の坂道を下り、被告は右方向から来て信号待ちをしていた =横浜市西区平沼1丁目

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 横浜市西区の見通しの悪い交差点で2012年、自転車が転倒、運転していた男性=当時(58)=が死亡した事故があり、自転車で進路を妨害したとして、過失致死の罪に問われた会社員の男性被告(37)の判決公判が19日、横浜簡裁であった。長坂和仁裁判官は「坂道を高速度で下ってきた男性が徐行義務を怠った」として、無罪(求刑罰金20万円)を言い渡した。

 判決などによると、事故は12年6月、同区の信号機のある交差点の自転車も通行できる歩道上で発生。被告が直進するため信号待ちをしていたところ、男性が坂道を下ってきた。交差点の角に構造物があったため互いに見通しが悪く、男性は転倒し頭部を強打。約3カ月後に死亡した。

 公判では被告の注意義務違反の是非が争点となり、検察側は「いきなり前進した被告に進路をふさがれ、男性は取り乱して転倒した」と主張していた。

 判決理由で長坂裁判官は、下り坂の歩道を走行した男性の速度が時速25キロから30キロだったと指摘。「被告に一般的な左右確認義務はあるが、男性が通常の速度であれば被告を避けられた」として無罪とした。

 被告は昨年7月、同罪で罰金20万円の略式命令を受けたが、正式裁判を申し立て無罪を主張。最終意見陳述では「亡くなったことは遺憾だが、罪を犯したとは思っていない」と述べていた。

横浜地検の中村周司次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」としている。

 ◆歩道走行後絶たず、専門家「環境整備を」

 歩道上で、自転車同士の出合い頭から起こった今回の事故。専門家は無罪判決に「判決内容を前提とするならば、妥当な判断」とする一方、「歩道を走行する自転車が少なくない現状では、こういった事故は起こり得る」と、法律に見合った自転車の走行環境の改善を求めている。

 道交法では、自転車は乗用車などと同じ「車両」に位置付けられており、車道走行が原則だ。自転車政策に詳しいNPO法人自転車活用推進研究会(東京都品川区)の小林成基理事長は、「歩道は歩行者のためのもの。自転車通行可とされていても、自転車は徐行しなければいけない」と指摘する。

 自転車にとって、歩道は事故の危険性も高い。歩道走行の自転車は車道走行に比べ、車から認知しにくくなるとされ、米連邦交通省の調査では、車道走行に比べた歩道走行の事故率は、6・7倍に及ぶ。

 だが、歩道走行に求められる徐行とは小林理事長によると「大人が速足で歩く程度の速度」。自転車に乗るメリットはなく、車道走行するルールが浸透していないため、小林理事長は「歩道でもスピードを出す自転車は多い」と現状を分析する。

 車道の歩道側に自転車専用のレーンを整備する動きもあるが、県内では川崎市や相模原市などの一部にとどまっている。小林理事長は「行政は自転車が車道を安全で快適に走行できる環境を整える責任がある」と強調している。

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