神奈川と平成・武蔵小杉 変わる街、新旧住民の出会い|カナロコ|神奈川新聞ニュース

神奈川と平成・武蔵小杉 変わる街、新旧住民の出会い

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2019/01/31 02:00 更新:2019/01/31 02:00
 午前中は大学教授を招いての講座。昼食を挟み、午後は川崎市内で活躍する市民グループ代表によるクロストークだった。参加者同士の顔見知りも多く、冗談を交わしながら自らの活動内容を語る。

 昨年10月末、同市中原区で開かれた「こすぎの大学」5周年イベント。運営メンバーの一人、大坂亮志さん(42)もトークに加わり、これまでの活動を楽しげに振り返った。

 大坂さんは武蔵小杉で生まれ育った。幼少期の小杉の印象は、活気にあふれた商店街と人懐こい住民、そして企業の工場群だ。一時期、海外留学で地元を離れたが、ほとんどをこの地で過ごしてきた。平成の30年間でも特にこの10年間での街の変わりようには、大坂さんも目を見張る。

 こすぎの大学は、そんな変化の激しい街、武蔵小杉に関わる人が講師と生徒役に分かれ、学び合う場。武蔵小杉駅前のメガネ店2代目でもある大坂さんや同区内に事業所があるNECの社員、タワーマンション(タワマン)の住人ら6人で運営する。大学という名だが、堅苦しさはない。

 「月1回、地元の人と楽しくお酒を飲む場でもあります」と大坂さんは笑う。地元ベンチャー企業の見学会、父親が集まる飲み会「パパ部」、親子プログラミング教室、チャンバラ大会-。各分野で特技を持つ人が先生となり、さまざまな企画と、新たなつながりが続々と生まれる。

 「初めはノリでした。こんなに長く続くとは思わなかった」。始めてみると、ニーズは高かった。「皆、会社や家庭でもないサードプレイスを求めていたんでしょうね」

 立ち上げのきっかけは5年前、NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント(エリマネ)が開いた「読書会」だった。当時、大坂さんはエリマネの理事を務めていた。

 エリマネは、小杉に初のタワマンが完成する1年前の2007年、市の主導でつくられたまちづくり組織だ。既存の町内会、自治会では抱えきれない新住民が一気に増え、エリマネはその受け皿となった。

 「タワマン住民には、新しい形で地域に参加したいという思いが強くあった。当初、手法を巡って旧住民との間にあつれきもありました」と大坂さんは打ち明ける。しかし、エリマネと商店街で毎年開く小杉フェスタなどで顔を合わせるうち、両者は次第に打ち解けていった。

 今では、子育て交流の場「パパママパークこすぎ」や生き方の悩み相談に応じる「おしゃべり相談」など多彩な活動を展開。こすぎの大学を生んだ「読書会」もエリマネ活動の一つだった。変化を続ける街で、旧住民、新住民、企業人が出会いを求め、集まる。そこには、戸惑いや郷愁を抱きつつも街の移ろいを受け入れ、融合を模索してきた人々の姿が浮かび上がる。

 現在、小杉駅前にある「メガネのオーサカ」は、東北から集団就職で上京した父親が48年前、近くのスーパー2階5坪のスペースで開いた。駅前の再開発で近く、仮店舗に移り、20年からは駅前に完成する新ビルで営業を始める。

 タワマンが林立し始めたのはここ10年。急激な街の変化に「ついていけない」と嘆く常連客もいる。

 地方の同業者から聞こえるのは人口減の話ばかり。「その点、小杉は恵まれている。人口が増えるのを嫌がる商売人なんていませんからね」。大坂さんは笑い、続けた。「地元の知り合い、友人がものすごく増えた。これがほんとに面白くてね」。変化に富む街を楽しむ、商売人の2代目がそこにいた。

(2019.1.17掲載、桐生 勇)

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