わが家がなくなる 社会福祉法人破産、無念のホーム入所者|カナロコ|神奈川新聞ニュース

わが家がなくなる 社会福祉法人破産、無念のホーム入所者

職員手作りのクリスマス飾りに彩られたリビングで別れの時を待つ入所者(左)と職員=二宮町川匂のグループホーム「かわわの家」

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 大磯、二宮両町で高齢者介護施設などを運営する社会福祉法人「大磯恒道会」(大磯町)が12月、東京地裁に破産を申し立てた。帝国データバンクによると、負債額は6億4400万円。別法人が事業を継承することとなったが、両町の2事業所は休止する方針だ。このうちグループホーム「かわわの家」(二宮町川匂)では年内の休止に向け、入所者の他施設への移動が慌ただしく進んでいた。「わが家がなくなる」-。入所者や家族、職員たちは無念の思いを抱えたまま、年越しを迎えようとしている。

 12月24日、冷え切った朝だった。クリスマスツリーが飾られた「かわわの家」のリビング。この日限りで施設を退去する入所者の遠藤純子さん(89)=仮名=に、職員の山西志保さん=仮名=が寄り添って、語りかけた。

 「この家は古いから工事をするの。ちょっとの間の引っ越しだから。私たちも後から必ず行くからね。大丈夫だよ」

 心配をかけまいとする精いっぱいのうそだった。認知症がある遠藤さんは外に運び出される衣装ケースやクリスマスツリーを見ながら動揺した様子を見せる。

 「不安だよね。私も不安だよ」

 山西さんはぽつりとつぶやいた。

「家がなくなった」


 破産の知らせから間もなく、施設を年内で休止させることが法人から伝えられた。11月に14人いた入所者は受け入れ先が決まった順に施設を去り、遠藤さんも同町内の特別養護老人ホームへの移動となった。

 「ここが終(つい)のすみかと思っていたのに」と憤るのは遠藤さんの長女・伸代さん=仮名。遠藤さんは3年ほど前から認知症の症状が進み、家族が受け入れ先の施設を探したものの、満床などを理由に断られることもあった。

 最終的にかわわの家に決めたのはアットホームな雰囲気に引かれたからだ。小さな平屋建てに、リビングから直接、庭に出ることができる間取り。料理も裁縫もできる。「母は庭いじりも家事も好きな人だったから」。そんな環境だからこそ家族の最後の時間を託すことができたはずだった。

 入所して1年半がたってからの退去の通告。「母は物ではない。特別養護老人ホームでこれまでのようなきめ細かいサポートが受けられるかどうか」と伸代さんは不安を募らす。別の職員も「認知症には環境の変化が一番良くない。健康状態にも影響がなければいいが」と懸念する。

 最後に残った入所者の女性も27日に移動を終えた。「職員も入所者もみんな家族のような場所。その家があっという間に全部なくなってしまった。今は喪失感しかない」。閑散としたリビングを見つめる山西さんは、使命感だけで乗り越えてきたここ数年の苦悩を振り返り、声を詰まらせた。

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