【減災新聞】手探り続く福祉避難所 想定外の「直接」「越境」も|カナロコ|神奈川新聞ニュース

【減災新聞】手探り続く福祉避難所 想定外の「直接」「越境」も

 一般の避難所で被災後の生活を送るのが困難な高齢者や障害者、乳幼児らを設備や環境の整った施設で受け入れる「福祉避難所」の開設・運営を巡り、試行錯誤が続いている。7月の西日本豪雨や9月の北海道地震では一定の役割を果たしたものの、対象外だった福祉施設への「直接避難」や市外への「越境避難」など想定外の事態も。災害の規模が小さい場合は開設されず、運営ノウハウが共有されていないため、被災地の教訓を今後に生かす動きも始まっている。

 西日本豪雨の際、倉敷市真備町地区で大規模な浸水被害が起きた岡山県では、福祉避難所が各地に開設された。県保健福祉課によると、ピークは岡山、倉敷両市の34施設で計78人を受け入れた7月21日。倉敷市内の1施設では12月に入ってからも、複数の被災者が身を寄せた。

 同市や総社市では、被害を受けた施設が少なくない。このため高齢者施設の協議会が独自に調整に当たり、岡山市内の施設が倉敷、総社市内の高齢者を受け入れた。岡山市での福祉避難所の開設は初めてだったが、「複数の市で施設を営む社会福祉法人が被害のない市内の施設を利用し、市外の避難者を受け入れたケースもあった」という。

 市はウェブサイトなどで福祉避難所について「避難生活の長期化が予見される場合、受け入れ態勢を整えた後に開設する」「緊急時に必ず設置されるものではない」などと説明し、まずは小中学校などの指定避難所に向かうよう呼び掛けているが、今回の豪雨では「福祉施設に直接避難した人が多かった」。集計では、15カ所で市内の高齢者ら67人を受け入れたものの、このうちグループホームと介護施設の計2カ所は市があらかじめ協定を結んだ施設(70カ所)でなく、受け入れの実態を踏まえて事後に福祉避難所として追認した。この2施設の避難者を含めた53人が、指定避難所を経ない直接の避難者だったという。

 市保健福祉企画総務課の担当者は「日頃からデイサービスなどで利用している施設に身を寄せた高齢者は多く、協定を締結していない施設も『地域のために』『困っている人がいる』といった理由で自主的に受け入れてくれた。実際の避難者はもっと多かったはず」と推測。その一方で「各施設とも通常の利用者対応もあり、余裕のない中で運営している。市から開設を要請した協定施設に『一人も受け入れられない』と断られたケースもあった」と明かす。

 こうした経験や課題を踏まえ、市は福祉避難所のマニュアルを見直す方針。施設から研修や訓練の実施を求める声が出ていることから、「町内会などによる地域の防災訓練に加わり、福祉避難所の開設や受け入れなどの手順を確認することも提案していく」考えだ。

 一方、北海道地震で札幌市は一般の避難所で生活を続けるのが困難な2人を確認し、高齢者施設と障害者施設に開設を依頼。両施設とも停電の影響が解消するまでの数日間、福祉避難所として受け入れた。

 手順に沿った対応だったが、開設された施設の名称を公表しない市の対応に疑問の声が上がった。

 市保健福祉局総務課は「施設名を公表すると直接避難する人が多くなり、混乱を招きかねない。協定を結んだ段階から行っていない」と説明。「名称公表の点に限らず、今後に向けて今回の対応について検証する」意向だ。

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