将棋のはなし(88)こども大会(下)惜しくも…|カナロコ|神奈川新聞ニュース

将棋のはなし(88)こども大会(下)惜しくも…

日本将棋連盟指導棋士五段、本紙将棋担当記者

【2018年12月16日紙面掲載】

 11月18日、千葉市の「幕張メッセ」で行われた「将棋日本シリーズ テーブルマークこども大会東京大会」。教え子たちの応援を途中で放り出してサッカー観戦に出掛けた私は、「内田君ベスト4進出です!」の報を受けて駅へ走った。

 小学3年の内田弓月(ゆづき)君は、川崎市内の教室で初段。いつも朝早く来て勉強し、強い相手との対戦を自ら望むなど、意欲的な少年だ。低学年部門なので多少の期待はあったが、まさかここまでとは。

 決勝は大勢の観客に見守られ、プロ棋士の解説も付く。その晴れ舞台を見ないようでは何のために来たのか分からない。

 電車に飛び乗り、何とか間に合いそうだとほっとした瞬間、関係者から「準決勝で負け」のメールが届き、力が抜けた。

 ここまでよくやったというのが実感だった。予選から9連勝したのだから大したものだ。少しだけ「あと1勝できれば…」の思いもよぎるが、立派な3位入賞である。

 電車は会場の最寄り駅に着いた。行ってねぎらおうか。でもまだ息が上がっているし、今度でいいや。このまま帰ろう。

 乗ってきた知らない子どもたちが「弓月と違う山に入りたかった」「弓月はどこまで勝ったかな」「準決勝に残ってたよ」なんて話している。私は「準決勝で負けたよ」と心の中で答えた。

 翌週の教室。内田君に会うなり「先生のおかげで3位になれました」と言われた。だからではないけれど、私は彼の二段昇段を認定した。

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