【減災新聞】津波避難、「夜の訓練」居酒屋で初実施|カナロコ|神奈川新聞ニュース

【減災新聞】津波避難、「夜の訓練」居酒屋で初実施

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/11/18 11:36 更新:2018/11/25 10:30
 地域ごとに異なる津波のリスクや課題を踏まえ、避難のあり方を見直す動きが広がっている。5日の「津波防災の日」を中心に行われた訓練では、近くの高台を目指すだけでなく、想定状況や地形、交通事情などを考慮する工夫が各地で見られた。避難の難しさを突き付けた東日本大震災から7年半余り。教訓を生かすための模索が続く。 

横浜・馬車道
 おでんなどのメニューが並んだテーブルを囲み、大勢の客が和やかに談笑する店内に、緊急地震速報の報知音が鳴り響いた。

 「落ち着いてください。鉄板の火を消してください」。停電で照明が消え、店員らが大声で呼び掛ける。客が悲鳴を上げてテーブルの下で揺れをしのいでいると、津波警報が発表された。

 「当店は津波の避難施設ではありません。皆さまには避難してもらいます」「スタッフの指示に従ってください」

 12日夜、横浜市中区馬車道地区の居酒屋「よりみち酒場」。宮城県石巻市で震災後に取り組まれた「夜の避難訓練」が横浜で初めて実施された。店の営業形態から「夜の津波」に備える必要があるが、客のいない昼間の訓練では課題をつかめないからだ。

 店舗2階にいた約80人の客らは懐中電灯などを頼りに階段を下り、避難場所に設定された市役所へ。アイマスクを着け、つえを付いた人を誘導したほか、酔った客や外国人、負傷者も想定。店外への誘導はおおむねスムーズだったものの、ベビーカーを押して参加した人もおり、避難完了までに20分以上かかった。

 店に戻ってからの振り返りでは、「もっと近くに逃げるべきだ」「足をけがしたら避難できない。台車や松葉杖を店に備えておけないものか」などと多くの課題が指摘された。周辺には上階へ逃げ込むのが困難な雑居ビルが多く、近くの津波避難ビルだけでは受け入れ人数が不足する恐れもある。

 飲食店やオフィスビルが立ち並ぶ馬車道地区は最大級の津波で1~2メートル浸水する恐れがある。一斉に避難しようとする客らが通りに殺到する事態も予想され、「看板が落下して道をふさげば、思うように避難できない」と不安の声も。繁華街特有の混乱をいかに回避するかという地区全体の課題も見えてきた。

 訓練の実行委員長を務めた水口憲治さん(50)は「今回は定休日に実施したが、より現実に即した内容にするため、営業時間中にアルバイトの店員が関わる訓練や複数の店舗で同時に実施する方法も検討しながら今後も継続していきたい」と話した。

バス乗客を高台へ誘導


鎌倉・材木座

 鎌倉市内では5日、海沿いの材木座地区を走る京急バスから乗客を避難誘導する訓練があった。

 目の前の相模湾で大規模地震が起き、10分後に最大で14メートルの津波が押し寄せると想定。海岸付近を走行中のバスに営業所から無線で地震発生の連絡が入り、津波警報の発表と避難誘導の指示が伝えられた。

 乗客役の社員や住民ら約40人を乗せたバスは、市が避難場所に指定する光明寺へ。徒歩10分ほどの高台に向かったが、雨の影響で坂道は滑りやすい状態。誘導した運転士は「足元が悪くなっています」と注意を呼び掛けた。

 参加者も協力しあい、背中を押して手助けしたり、車いす利用者の避難に協力したりして、少しでも早く安全な場所にも到着できるように工夫した。

 京急によると、運転手はバス停ごとに避難先を定めたマニュアルを基に、津波警報時の避難対応に当たることになっている。ただ、「より安全な避難方法がないか確かめるため、地元の声も踏まえたい」として、今年から住民参加型の検証訓練を始めている。「海沿いを走る路線は横浜や横須賀、逗子、三浦市などにもある。同様の訓練を今後も重ねていく」方針だ。

自助のヒント 横浜の津波想定
 東京湾側の横浜市でも津波による浸水被害の恐れがある。県の想定によると、相模トラフの最大級の地震や慶長型地震で3~4メートル前後の最大波が押し寄せる。商業施設やオフィスビルが集積する横浜、関内両駅周辺の繁華街は、地盤が低い上に河川の遡上(そじょう)も見込まれるため、浸水範囲が広い。深さ1~2メートル前後を中心として、局所的に5メートル超の浸水となる可能性が示されている。津波避難施設は現在、市内全体で175カ所。西区や中区はホテルや企業、立体駐車場などが多い。

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