支え合いの現場から 地域包括ケアの行方  模索続く訪問介護(下)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

支え合いの現場から 地域包括ケアの行方  模索続く訪問介護(下)

アセスメントの充実が課題

ヘルパーの声掛け、動機付けで再び調理に取り組んだ認知症の女性を紹介した成功例の寸劇

 介護保険の訪問介護サービスで、「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」を明確化した厚生労働省通知「老計第10号」。同通知をテーマに横浜市神奈川区で9月に開かれた市訪問介護連絡協議会と市介護支援専門員連絡協議会の合同研修では、訪問介護の失敗例に続き成功例の寸劇も行い、「見守り的援助」の課題を検討した。

 成功例は、認知症を発症した1人暮らし女性の事例だ。女性は料理屋の元女将だったが、認知症のため、得意の料理が以前のようにできなくなり意気消沈し、料理は止めてしまった。また、ごみ出しや服薬も難しくなっていた。長男は老人ホームに入所させようとしたが、女性は自宅での生活を譲らない。

 長男から相談を受けたケアマネジャーは、訪問介護事業所のサービス提供責任者(サ責)と協議し、料理、ごみ出し、服薬などの「見守り的援助」を行うケアプランを考えた。ごみ出しも、生活援助としてヘルパーが代行してしまえば簡単だ。しかし、女性にごみ出しを促し、助言し、付き添うことで、女性の生活能力の維持や、認知症の重度化防止を目指した。

 女性宅で行われた担当者会議でケアマネジャーとサ責は、女性の状態、潜在能力を確認するとともに、長男に「見守り的援助」の意義を説明した。さらに、女将だったという女性の生活歴や孫との関係なども聞き、女性の強みや家事への動機付けとなるポイントなどを探した。

 スタートした訪問介護では、ヘルパーは女性から料理を教わるという態度で臨み、必要に応じサポートしながら、女性に料理を作ってもらうことに取り組んだ。孫を招待し、孫の大好物のハンバーグを作ってあげることを提案。カレンダーに日程を書き込み日々確認してもらったり、購入した食材を書いた付せん紙を冷蔵庫に張ったり、調理器具などの置き場が分かるように戸棚には張り紙をするなどの工夫を重ねた。

 その結果、孫との楽しい食事会が実現。孫の喜ぶ顔を見て女性は元気を得て、再び料理や家事に前向きになった。寸劇では、女性のやる気を引き出そうと苦労するヘルパーの様子が描写され、対人援助職としてのヘルパーの総合的な力量、専門性の必要性も示された。

 寸劇に続き、ケアマネジャー、サ責による座談会で「見守り的援助」の課題を検討した。

 重要とされたのがアセスメントだ。現場では、利用者の可能性について十分なアセスメントが行われているとは限らず、自立の可能性を掘り下げていないケアプランもあると指摘された。「都筑区医師会ヘルパーステーション」管理者の青柳かおるさんは「持てる力を生かし、維持することが自立支援。それにはアセスメントが非常に重要。定期的にアセスメントを続ける必要がある。ケアプランは常に変化する」と指摘した。

 また、「ケアサービスコパン」管理者の田中みどりさんは「ケアマネジャーのアセスメントとサ責のアセスメントを合体させ、視点を補い合ったアセスメントができたら良い」と述べ、ヘルパーの観察に基づく、きめ細かなアセスメントが必要と訴えた。「在宅看護センター横浜ケアマネステーション」管理者の佐藤直人さんも、ケアマネジャーのアセスメントを訪問介護サービス側に十分に伝える場が必要だとし、「担当者会議は時間が短すぎる。他に場を作ってもいい」と指摘した。

 一方、「見守り的援助」が強調される余り、生活援助の必要性が軽視されかねないとの懸念も表明された。「エニィタイムプラン」ケアマネジャーの大町砂和さんは、「何でも一緒にやろうブームになるのも怖い」とし、アセスメントでしっかり見極める必要性を指摘した。

 また、「見守り的援助」では料金や援助内容について、利用者、家族の理解が不可欠なことも指摘された。ケアマネジャーらの丁寧な説明に加え、自立支援や重度化防止について、幅広い啓発の重要性も浮き彫りになっていた。

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