目で“聴く”音楽で世界をつなげる|カナロコ|神奈川新聞ニュース

目で“聴く”音楽で世界をつなげる

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/11/04 11:47 更新:2018/11/04 14:39

【K-Person】HANDSIGN


 「目で“聴く”音楽を」

 手話で歌詞を視覚化し、歌い踊るパフォーマンスで知られる「HA(ハ)ND(ンド)SIGN(サイン)」が9月に「僕が君の耳になる」でデビューした。

 耳が聞こえない女性と、聞こえる男性が恋に落ち、結ばれるまでを描いた歌詞は、実話を基に書き下ろした。


 聴覚を失った女子大生との恋愛を描いたドラマ「オレンジデイズ」(2004年)を見て感銘を受けたTATSUが、二宮西中学校(二宮町)在学中に始めたダンスと、手話を融合させようと、幼なじみのSHINGOに声を掛け、05年にユニットを結成。サークルなどに通って手話を学んだ。

 湘南乃風の「純恋歌」の歌詞を手話にし、ダンスに取り入れた。だが、専門家に見てもらうと7割ぐらい間違っていた。「読み方が同じ『かわ』でも『皮』と『川』では意味が違うように、似た手の動きも、その位置などで意味が違ってくる」(SHINGO)。踊りながら、手話で“言葉”を伝える難しさを知った。

 国内のダンスコンテストで経験を積み、09年にニューヨークにある世界屈指の舞台「アポロ・シアター」のオーディションに挑戦。年間1万人以上が出演を夢見るステージに立ち、翌年帰国するまでの間、腕を磨いた。

 エンターテインメントの本場で喝采を受けたことは自信になった。そして障害者との共生が進むアメリカで障害のある人が生き生きと暮らす様子を見て、「日本もアメリカのようになってほしい」(TATSU)との思いに至った。

 手話の普及を目指して、14年から県内の中高生向けに手話を用いたライブを展開。訪問先は70校を超えた。

 「『手話なんて分からないから、寝ちゃおうと思っていたけれど、見たらかっこ良かった』と感激した生徒が、福祉関係の仕事に就いたと教えてくれた」(SHINGO)。「『自分と違う』と閉ざすのではなく、知ろうと歩み寄ってくれたことは、ドラマをきっかけに世界が広がった自分自身と重なりうれしかった」(TATSU)。

 曲間のトークも手話で行うライブには、聴覚障害者の姿も見られる。歌詞を口ずさむように、彼らが手話で“歌う”様子を見ると、観客とつながっていると感じることができる。「英語が話せなくても、サンキューくらいは分かる。同じように『ありがとう』と手話で伝えることができる人を増やしたい」と思いを込めた。

ハンドサイン ともに平塚市在住のボーカル・パフォーマーのTATSUと、SHINGOが、2005年に結成。17年に公開した「僕が君の耳になる」のミュージックビデオは、口コミで広がり、再生回数250万回を突破している。同市と協力した手話ダンス教室を展開するほか、FMヨコハマの毎週木曜の情報番組「Tresen」でレギュラーコーナー「7down 8up」(午後6時20分から)を担当。24日午後2時から、商業施設「トレッサ横浜」(横浜市港北区)内のイベント広場で無料ライブを行う。


記者の一言
 記者がライブの撮影をする際は、最前列の前、舞台との間に設けられた場所でカメラを構える。にじむ汗、吸い込んだ息で膨らんだ体。変化する表現者の姿は魅力的だ。そして生まれたばかりの音楽を伝えるスピーカーが、表面を揺らし届けてくれる音圧に幸福を感じる。音は空気の振動。「ズンズン」と突き上げられる感覚は体で受け止めることができる。TATSUさんは「『クラブで、重低音が体に響くのが気持ち良い』と耳が聞こえない友人から聞いた」という。音を楽しむことが音楽。その方法は耳からだけではない。聞こえない人に「行動を萎縮しないで」と二人は伝えている。

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