将棋のはなし(80)叡王への取材(上)昔の記憶|カナロコ|神奈川新聞ニュース

将棋のはなし(80)叡王への取材(上)昔の記憶

日本将棋連盟指導棋士五段、本紙将棋担当記者

【2018年10月21日紙面掲載】

 「将棋を覚えたきっかけは…」。型通りに始めてみたものの、何か調子が出ない。私が一番聞きたいのは、当たり前の履歴ではないのだ。

 神奈川文化賞未来賞を受賞した高見泰地叡王(25)へのインタビューである。15年ぐらい前、小学生の高見少年は私が講師を務める日本将棋連盟の教室に通ってきていた。彼が初タイトルを獲得し、今回の受賞に至ったことは本当にうれしい。

 心残りなのは当時の棋譜を残していないこと。そして将棋内容も全く覚えていないことである。

 本題もそこそこに聞いてみると、即答だった。「もちろん覚えていますよ。二枚落ちなども指しましたけど、平手でも教えていただきました」。

 私は指導対局でハンディをつけないのが好きだ。上手(うわて)だって飛車や角がないと面白くない。相手の棋力に合わせて指せば、内容や結果などは調整できる。

 高見さんは「やりたい戦形がある時や直前のタイトル戦で出た将棋を試したい時などは、何も言わなくても察して合わせてくれた」と続けた。

 記憶がよみがえってくる。確かに最新形も指した。プロを目指すであろうことは感じていたから、露骨な手加減はしなかった。数年前「わざと負けてくれていたのが今になって分かります」と言われたが、かなり本気で指していたと思う。

 受賞の取材とは思えない雑談は楽しかった。最後に私は「お願いがあるんですけど」と切り出した。続きは来週。

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