今田美桜主演映画がロングラン 「カランコエの花」同性愛を周囲の視点で描く|カナロコ|神奈川新聞ニュース

今田美桜主演映画がロングラン 「カランコエの花」同性愛を周囲の視点で描く

映画の一場面から。主役の一ノ瀬月乃を演じる今田美桜。中川は「演技力のほか頭のよさ、理解力が飛び抜けていた」と評する(©中川組)

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 同性に思いを寄せる高校生と周囲の反応を描いた映画「カランコエの花」が、予想を超えたロングランを記録している。公開は1週間限定の予定だったが、口コミで反響が広まり複数の劇場での上映が決定した。人を慕う気持ちに性の違いは関係ないといった事実を自然な映像美で見せる今作は、多くの鑑賞者の胸を打っている。

 「LGBT(性的少数者の一部)は病気ではありません」。とある高校2年のクラスで唐突に始まる特別授業。他クラスでは行われていないことから、教室はざわつき始める。「もしかしたら、うちのクラスにいるんじゃね?」

 今作の特徴は、同性愛を巡る問題を同性愛者本人ではなく、周囲の視点に立って描いていること。ここ数年で「LGBT」という言葉の認知が進む中で、具体的にどのように彼ら、彼女らと向き合うべきか。過剰な配慮や特別視はしていないか。そうした問いをも見る者に投げ掛ける。

 「僕の中で明確な答えがあるわけではないんです。あまり押し付けがましい限定的なメッセージではなく、一緒に考えられるような作品にしようと意識しました」と、監督の中川駿(31)は話す。

 今作を自身の「反省文」であると表現する。性的少数者を題材にした映画を撮ろうと決めた際、異性が恋愛対象の自分がどういう切り口で描けるのか悶々(もんもん)とする時期があった。それは「センシティブなテーマ」と認識していたからだった。

 「映画仲間に『その配慮がそもそも差別だ』と指摘され、自らLGBTの人たちと距離を取っていたことに気付いたんです」。この内省が今作の製作につながり、相手が同性であれ異性であれ、両思いになれない悲しさやもどかしさなど、恋愛における感情の多くが変わらないという事実も再確認した。

 作品では、つらいことがあっても簡単に逃げ場を見いだせない学校特有の閉鎖性が、俳優陣の高い演技力とともにリアルに映し出される。

 映画を見た同性愛者の人からは「学生時代の苦悩を思い出してもやもやした」といった反応や「(性的指向や性自認において)多数派の人が、性的少数者がどんな悩みを抱えているか知るいい機会にもなる」といった期待の声も寄せられたという。

 7月に東京・新宿K’s cinemaで1週間公開して以降、大阪や東京・吉祥寺などでも上映。同・アップリンク渋谷では2カ月以上の長期公開中。今月下旬以降も愛知や盛岡など各所で披露される。「もともと映画祭でお披露目の場をつくれればとの思いで製作していたので、この広がりは本当に予想外」と驚きを隠さない。

 「『LGBTを差別してはいけません』『性の多様性を尊重しましょう』といった言葉だけが先んじて広まっている」と感じている中川。それゆえに、「なぜLGBTを優遇しなくてはいけないのか」といったネガティブな意見も目にするようになった。

 ただ、と力強く言葉を継ぐ。「彼ら、彼女らは特別扱いなんかは求めていない。今被っている人権の侵害や偏見の目を改めてほしいだけ。この作品で、その誤解にも気付いてもらえると思います」

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