通信の復旧 使命と覚悟 国内初の船舶型基地局|カナロコ|神奈川新聞ニュース

通信の復旧 使命と覚悟 国内初の船舶型基地局

海底ケーブル敷設船「KOL」

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/10/08 17:03 更新:2018/10/08 17:03
 北海道で震度7を観測した9月6日の地震では、道内全域が長時間停電した影響で、携帯電話が広範囲でつながりにくくなった。KDDI(au)は、沖合の船に載せた基地局が陸に向かって電波を送ることで携帯電話を利用できるようにする「船舶型基地局」を日本で初めて運用。現地で通信復旧に活躍し、人々の不安解消に貢献したのは、横浜港に母港を置く海底ケーブル敷設船「KDDIオーシャンリンク」(KOL)だった。


北海道地震で力を合わせ


 KOLは横浜市神奈川区恵比須町に基地があり、普段は太平洋や東シナ海などで海底ケーブルの修復作業を担っている。2017年に災害時に船舶型基地局となる通信用の衛星アンテナを設置したばかりだった。

 KDDIは地震発生直後に災害対策本部を立ち上げ、6日午前11時40分にKOLに出動を指令。KDDIからは20~50代の技術者8人が乗船し、アンテナなどの通信機材をはじめ救援物資や水、非常食などを積んで午後6時に出港した。

 船舶型基地局は当初、苫小牧港で運用する予定だったが、44時間かけて航行中に現地の電力が復旧。苫小牧港に入港せずに針路を急きょ日高沖に変え、8日午後2時に沖合約10キロに停泊した。午後7時43分から11日午前8時半まで約2日半運用し、復旧が遅れていた沿岸約20キロのエリアをカバーすることができた。

 「救援物資を被災者に届けることもミッションの一つだったが、通信の復旧は船に乗り組んだみんなの思いだった」。技術統括本部運用本部の上口洋典運用管理部副部長は、針路を変えた理由をそう明かす。

 「唯一の連絡手段である通信が途絶えると被災者だけでなく、離れて暮らす家族や友人も不安になる。災害発生時に最優先すべき人命救助のためにも、全員の総意で通信の早期復旧を決断した」と力を込める。

 船舶型基地局は、11年の東日本大震災の教訓から導入した。道路の寸断や光ケーブルが切断し、陸路からの基地局復旧が困難だったからだ。同部特別通信対策室の照井学さんは「船は出港すると、機材が壊れていても後戻りができない。2セット以上積んで何があっても絶対に立ち上げるという覚悟で挑んだ」と語る。

 洋上での寒さや船酔いに苦しみながら、通信環境を復旧することで被災地の復興に貢献した8人。KOLを所有するKDDIグループの国際ケーブル・シップ(川崎市川崎区)の原浩運航部次長は「技術者8人のほか、日本人航海士とフィリピン人船員の計45人も力を合わせてミッションを成し遂げた」と言葉を継いだ。KOLは11日に苫小牧港で救援物資を下ろし、14日に横浜に帰港した。

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