将棋のはなし(77)今も使う先崎流の作戦|カナロコ|神奈川新聞ニュース

将棋のはなし(77)今も使う先崎流の作戦

日本将棋連盟指導棋士五段、本紙将棋担当記者

【2018年9月30日紙面掲載】

 先週に続き記録係の思い出。ネタがなくて昔話に逃げていると思ったそこのあなた、図星です。

 今回はタイトル戦ではなく、2000年に東京の将棋会館で指された羽生善治竜王-先崎学九段(肩書は現在のもの)戦。

 早い時間に羽生快勝で終わり、書き上げた棋譜をコピーして対局室に戻ると両者はいなかった。隣の対局に配慮し、感想戦は場所を変えたようだ。珍しいことではない。

 移動先の定番である控室をのぞいたが、誰もいなくて慌てた。感想戦を見て勉強しなくては記録係を務めた意味が半減する。探し回って階下の記者室で二人を発見した。

 将棋は角換わり腰掛け銀という戦形で、先崎先生が工夫した作戦を見せた。早い段階で差がついたので焦点は仕掛けの周辺に絞られ、変化によっては詰みまで調べ尽くす濃密な検討が行われた。

 感想戦を対局室でやっていれば、棋士や奨励会員が見学していたはずである。しかしここには数人の記者がいるだけ。この情報は拡散されないだろう。チャンスだ。

 両者の見解やさまざまな手順を頭に入れ、自分なりのアイデアも足して先崎先生の指し方を拝借してみると、驚くほどうまくいって奨励会で白星を稼ぐことができた。盗作などと言うなかれ。将棋の指し手に著作権はないので合法的である。

 この先崎流は今もネット将棋で使うと結構勝てる。しかし最近は序盤戦術も様変わりし、なかなか研究した局面までたどり着かないのが残念だ。

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