「男性でも女性でもない」漫画家の内面迫る 横浜で上映|カナロコ|神奈川新聞ニュース

「男性でも女性でもない」漫画家の内面迫る 横浜で上映

映画の一場面から。新井祥さん(左)とうさきこうさん(渡辺監督提供)

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 自身の性別を「男性でも女性でもない何か」と自認する漫画家、新井祥さん(47)の内面に迫ったドキュメンタリーが29日から、シネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区)で上映される。新井さんや周囲の性的少数者たちの日常から、男女にとどまらない多様な性のありようを見つめる本作。「マイノリティーだけではない、みんなの愛とセクシュアリティーの物語です」。メガホンを取った渡辺正悟監督はそう語る。

 タイトルは「性別が、ない!インターセックス漫画家のクィアな日々」。

 女性として暮らしていた新井さんは、体の変化を感じ30歳の時に病院を受診。染色体検査で性分化疾患と判明した。性分化疾患とは通常、男女どちらかに統一される性器や染色体の性別が曖昧だったり、一致しなかったりする疾患の総称。以降、新井さんは自身を「中性」と認識し、体験とともに多様な性を4こま漫画に描写している。

 漫画は実に軽妙でユーモラスに描かれる。「そのこまとこまの間に、作家が眠らせている意識がきっとあるはずだと直感的に思ったんです」と渡辺監督は言う。余白に感じ取った葛藤や希望。「それを撮りたい」と、ドキュメンタリー制作を打診した。

 ときに飄々(ひょうひょう)と、ときに熱く、カメラの前で自身の生き方や性について語る新井さん。1年にわたって撮影した映像には、新井さんのパートナーでゲイを公表している漫画家、うさきこうさんとの生活や、二人で香港の性的少数者のパレードに取材に出向いた際の様子、タイで男性として生まれながら女性の姿で社会生活を送るガトゥーイと呼ばれる人に会う場面などが、日頃の仕事ぶりとともに映し出される。

 「幸せに死んでやるぜ」。映像の途中、新井さんの宣言が高らかに響く。性別に揺らぎを感じるなどして自分の存在をネガティブに捉えて生きる若者たちの思いをも背負っていると、渡辺監督には映る。

 「男女が出会って恋愛し、結婚して子ども、そして孫が生まれる。これが一部の人がイメージする幸せの形。でも、性の内実や生き方、幸せのあり方はもっと多様」と渡辺監督は呼び掛ける。「多様であるが故に、これはこの社会で共存するみんなの物語なんです」とうたう本作は、一人一人の生き方を決して否定せず、少数者とされる人々をごく身近な存在として示してくれる。

 「映画館特有の落ち着いた空間で、登場人物たちの思いにじっくりと触れてほしい。それはきっと、自分自身とも向き合う時間になります」

 上映は10月5日まで。いずれも午後4時から。初日の上映後は新井さんとうさきさん、渡辺監督の舞台あいさつを予定。問い合わせはシネマ・ジャック&ベティ電話045(243)9800。

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