〈時代の正体〉川崎・29日からテロ対策見本市 市民団体が批判強める|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉川崎・29日からテロ対策見本市 市民団体が批判強める

川崎市の施設使用許可に抗議する「川崎でのイスラエル軍事エキスポに反対する会」のメンバー

【時代の正体取材班=石橋 学】川崎市とどろきアリーナ(中原区)でイスラエル企業が29、30日に開催するテロ対策装備・技術の見本市を巡り、施設使用を許可した市に対し、市民団体が批判のトーンを強めている。国際法違反のパレスチナ占領政策に関わる企業の出展が明らかになったとし、「人権侵害への加担が現実味を帯びている」との危惧を深める。市が掲げる人権尊重の理念との乖離(かいり)、すなわち「人権の視点」の欠如が問われている。

 「国際社会の一員として、グローバルな課題を真正面から捉え、世界の平和と繁栄に貢献し…」。市が全国の自治体で唯一署名する国連グローバル・コンパクト(GC)に関し、福田紀彦市長が市のホームページに寄せた一文だ。GCとは、国連が提唱する企業・団体の活動における人権や労働、環境などに関する普遍的原則。10の原則のうち1と2では「人権の保護を支持、尊重」「人権侵害への非加担」をうたう。

 見本市を巡っては開催が近づき、主催者側がフェイスブックなどで出展企業の一部を紹介。占領地の隔離壁の建設を請け負った企業のグループ会社や監視システムの提供企業、イスラエル軍諜報(ちょうほう)部隊の出身者が設立したセキュリティー企業などが名を連ねる。

 こうした情報を踏まえ、市の矛盾を指摘するのは非政府組織(NGO)「パレスチナの平和を考える会」の役重善洋さん。「明らかになった出展企業は占領政策に直接的、構造的に関与しているものばかり。国際社会との約束であるGCと施設の使用許可判断がリンクしていない」と疑問視。「入植地ビジネスは国連調査団が終結を勧告するなど人権の観点からも非難が高まっている。セキュリティー分野でイスラエルとの経済協力を促進する安倍政権自体問題だが、自治体による公共施設の提供は国際的な潮流からさらに逸脱している」と批判する。

 福田市長は22日の定例会見で「武器などの危険物の展示はない。公共施設は貸し出しが原則で、不許可の理由がない」との見解を改めて示し、同アリーナ条例の不許可要件である、施設を毀損(きそん)する恐れがある▽管理上支障がある▽指定管理者が利用を不適当と認める-のいずれにも該当しないとの立場を崩していない。

 市は展示物リストの提供を主催者に求めたが、出展企業は未確認のまま。展示物という外形上の物差しでのみ判断を下す姿勢に、市人権施策推進協議会前委員の北井大輔さんは「条例の解釈を人権尊重の視点から行うべき」と求める。市の人権施策推進基本計画「人権かわさきイニシアチブ」はGCなどを引用して「あらゆる施策に人権尊重の視点を一層反映させていく」と明記していることから、「必然的に『不適当』という不許可判断に至るはずだ」と北井さんは話す。

 要求書や署名提出を通じ使用許可の撤回を求めてきた市民団体「川崎でのイスラエル軍事エキスポに反対する会」の杉原浩司さんは、条例の文言を形式的に解釈する福田市長の説明に「パレスチナ人が殺害されている現実に向き合うことを意図的に避けているかのようだ。掲げた人権尊重の理念が行政やトップの規範となっていない証拠」と手厳しい。「人権侵害に加担する企業の商談会への施設提供は、結果的にイスラエル政府の残虐行為を手助けすることになる。市民の異議申し立てに耳を貸そうとしない姿勢と合わせ、二重の意味で罪深い」

ISDEF Japan(イスラエル防衛・国土安全保障見本市) 東京五輪開催を機に大規模イベントでの安全対策の提供をうたい、イスラエルやカナダ、日本など6カ国の46社が出展予定。招待者か事前登録した人のみ入場可。主催者のサイトでは、イスラエル諜報特殊庁モサドの元幹部や大野功統元防衛庁長官が参加予定とも案内されている。

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