<連載>農と福祉 川崎の模索【下】共同事業で農地守る|カナロコ|神奈川新聞ニュース

<連載>農と福祉 川崎の模索【下】共同事業で農地守る

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/08/02 16:26 更新:2018/08/02 16:55
 都内の外資系IT企業に勤める村西明さん(55)=川崎市高津区=は、かつて遊休農地対策と障害者の就労を同時に実現する方策を探ったことがある。市都市農業振興センターのモデル事業に応募し、2016年度から2年間、知的障害者たちに農園作業を体験してもらった。

 自宅近くの市立中央支援学校に通う子どもたちと音楽の催しで交流したのがきっかけ。その卒業後の道を考えた時、施設で工芸品やジャム、菓子を作る暮らしだけでいいのかと疑問を持った。

 富士通川崎工場の技術者だった時、社員食堂で掃除の体験をしてもらうなどの試行錯誤を重ねた。いずれはロボットに取って代わられる掃除ではなく、食べ物に関わる農業こそ障害者の将来の仕事にすべきだとモデル事業に携わった。

 中央支援学校や福祉事業所と協力した。子どもたちは農園の草取りや収穫、倉庫で作物の選別作業を実習した。遊休農地で黙々と草取りをし、収穫したジャガイモを重さで振り分ける作業を忍耐強く続ける姿に接した。訓練さえ受ければ農業をやれると確信した。

 村西さんはいま、ボランティア仕事の域を超えた収益モデルの確立を考えている。「まとまった農地を運営する農業法人が、規模の大きさを生かし障害の特性に応じて雇用を確保する方策が必要」と指摘する。

 農福連携には農業と福祉の担当者の連絡調整が欠かせない。接着剤となる両者による「都市農業推進協議会」の設置を市に提案する一方、企業が資金提供する「川崎モデル」を模索している。

収入増へ道筋は


 知的障害者が農園で作業をする社会福祉法人「はぐるまの会」は、雇用契約に基づく就労が難しい障害者たちが身を寄せる生活介護事業所である。

 農業部門をけん引する福田真さん(41)は、障害者1人につき月1万5千円ほどにとどまっている現在の工賃を増やしたいと願う。高品質な農産物や加工品を生産することで、工賃の倍増を目指す。

 いま探っているのは農家との共同事業だ。「遊休農地にハウスを造り、うちが農作物を生産する。農家は先祖伝来の農地を売ったり、アパートにしたりせずに継承できる。障害者は働く場を確保し収入アップを図ることができる」と将来を見据える。

効率優先を戒め


 多摩区東生田で体験型農業施設トカイナカヴィレッジを運営する西山雅也さん(52)は、精神障害者の農業就労を後押しする。昨夏と今春の2回、仕事が原因でうつ病などになった人を短期研修生として受け入れ、動物や野菜の世話をしてもらった。

 西山さんは「障害者と農業にはかなりの親和性がある。ホームレスになっていた男性も農園で元気を取り戻した。土や野菜とコミュニケーションできれば大丈夫」と農の力を語る。

 障害者の農業就労を支援する人たちはそろって、こう戒める。農業の効率を優先するあまり、多様な特性がある障害者を置いてきぼりにしてはならない、と。

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