<連載>農と福祉 川崎の模索【中】都市農業のジレンマ|カナロコ|神奈川新聞ニュース

<連載>農と福祉 川崎の模索【中】都市農業のジレンマ

収穫した野菜を直売所に搬出する障害者と農園サポーター=川崎市宮前区水沢の「はぐるま稗原農園」

 「農福連携」の旗振り役は、一般社団法人JA共済総合研究所(東京都千代田区)の主任研究員、濱田健司さん(49)だ。農業と福祉の現場が連携を強化するプラットフォームとして、昨年3月に設立された全国農福連携推進協議会の会長でもある。各地で展開される事業のキーワード「ノウフク」も自身で考案した。

 10年ほど前に受けた、社会福祉法人の障害者の月額賃金(工賃)を上げてほしい、という相談がきっかけだった。「月1万2千円と聞き、1日の間違いではないかと耳を疑った」。その記憶はいまも鮮明だ。

 下請け仕事の障害者の賃金はあまりに低く、自身の専門分野の農業は担い手不足に悩んでいた。両者をマッチングして、障害者が農業で月5万~10万円ぐらいは稼げるようになればと思った。社会的立場の弱い障害者が施設に閉じこもらず、農業で地域に関わってほしいとの願いもあった。

 濱田さんは二つの具体的な連携の形を考えている。一つは、障害者が身を寄せる社会福祉法人などの事業者が、自身の農地で農産物生産や加工を手掛ける方法。もう一つは、農家や農業法人が社会福祉法人などと農作業の請負契約を結び、障害者が畑に出向いて施設外就労として従事するやり方だ。

 「農業就労を第一歩に、障害者が社会で役割を果たしてほしい。農業と福祉が元気なら地域も元気になる」。連携の狙いは明確だ。

小規模経営が壁に


 川崎市内で連携は進んでいないのが実情だ。社会貢献として福祉に理解のある農家が障害者に働いてもらう事例はあるが、広く浸透する気配はない。家族経営の小規模な農家にとって、障害者雇用には高いハードルがあるからだ。

 市都市農業振興センターによると、市内の農業従事者は約1100世帯で、3千平方メートル程度の小規模な農地が多い。平均年齢は61・6歳と高齢化が進む。担い手不足などによる遊休農地は市農業委員会の調べで約7500平方メートル(昨年3月時点)。同委員会は年間で千平方メートルの遊休農地解消を目指す。

 同センターと市の障害者雇用部門の担当者は約2年前、「農福連携」について意見を交わした。農業収入がそう多くない農家に障害者雇用のニーズがあるのかが話題になった。「個人の農家は同じ賃金を支払うなら作業効率の良い健常者を雇う」「障害者ゆえ、安い賃金になるなら収入増に結び付かない」。議論はまとまらず、その後の具体的な動きはみられない。

 同センターは「企業のような大きな母体が農園を運営するなら障害者就労は可能だ。小さな農家は障害者をどう雇用すればいいのか分からない」と指摘する。

 連携を進めるための広い農地や、規模の大きな農業団体がある地方とは異なる環境にある川崎市内。それでも壁を乗り越える模索が始まっている。

 ◆全国農福連携推進協議会(東京都千代田区外神田、濱田健司会長) 農福連携の取り組みに共感した全国の農業や福祉関係者、企業、団体、個人が集まり2017年3月に設立。「ノウフク PROJECT」として、各種フォーラム、スタディーツアー、マルシェなどを開き啓発活動を行う。民間主導型のプラットフォームとして、政策提言をし、分野の異なる人々をつなげる役割を果たすことで連携を各地に浸透させ、共生型の地域コミュニティーづくりを目指す。

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