<連載>農と福祉 川崎の模索【上】「農家」目指す障害者|カナロコ|神奈川新聞ニュース

<連載>農と福祉 川崎の模索【上】「農家」目指す障害者

今年から始めたミニトマト栽培に成功し、収穫作業を行う障害者と農園サポーター=川崎市宮前区水沢の「はぐるま稗原農園」

 障害者の農業との関わりがいま注目されている。農業で健康や心の充実を得る従来の試みにとどまらない。農作業による収入増や自立を目指す一方で、担い手不足で遊休地が増える農家の悩みに応えられる可能性を秘める。双方のメリットを生かす「農福連携」事業が各地でじわじわと広まる中、都市農業が盛んな川崎市内で「連携」の現場を訪ねた。

 赤や黄色のミニトマトが7月、たわわに実を付け始めた。宮前区水沢の住宅街に囲まれた農園。猛暑の中、知的障害者たちが収穫に汗を流していた。

 社会福祉法人はぐるまの会が運営する「はぐるま稗原農園」。ミニトマト栽培は今年から始めた。1日約5キロの収穫があり、順調なら3カ月ほど続く。近くの明治大農学部(多摩区東三田)が考案したソバージュ栽培という手法。あまり手がかからず、遊休農地で障害者による栽培が可能だという。

 農業部門を担当する同会の福田真さん(41)が、季節を感じることがあまり得意ではない利用者に、夏を実感できる農作業をと考えた。夏の象徴であるミニトマトを、従来のハーブや葉物野菜栽培に加えた。

 障害者が農園で働くことの意味を探し続けた福田さん。縫製品作りなどの室内作業が苦手な障害者が、野外作業でリフレッシュする効果を実感した。食べ物を作ることが自分の役割であり、仕事だと感じることが一番大切だと。

 近所の農家や消費者と交流する「地域の農家」になることを農園作業の目標に据えた。祭りなど地域行事にも参加する。

 ■「補助労働」を懸念
 同会の農業部門は成長している。約20年前に農業を始めた時、年間の収穫量は30万円程度にすぎなかった。それがいまでは、農業部門全体の売り上げが900万円を超えるまでになった。周辺農家の理解で約6千平方メートルの畑を活用している。ゆくゆくは、プロの農家の高品質な野菜と比べても遜色ないものを生産したいと願う。

 ただ、20代の障害者が農園の作業に集中できるまで5年ほどかかったケースもある。一定の収益を上げるのはそう簡単ではない。

 「農福連携」という言葉には懸念もある。野菜工場の補助労働というイメージがつきまとうからだ。「人手が足りず安価な働き手を求めているというのなら乗れない。作業に効率が求められ、障害者が自分の役割を理解するための農業を続けられるのか」と憂える。

 福田さんは、連携が収入増や自立を促進する効果は認める。障害者が地域の農家と一緒に農業を支え、豊かに暮らす道となるのか、見極めていくという。

 ◆社会福祉法人はぐるまの会(本部・川崎市多摩区菅馬場、紅谷卓男理事長) 1983年、市立稲田中の特殊学級(当時)の元教員たちが中心となり開設。現在は四つの作業所、9カ所のグループホームを運営し、知的障害のある利用者52人が、縫製品作り、喫茶事業、食品加工事業、農園活動などを行っている。98年から農作業に取り組み、現在では宮前区と麻生区にある遊休農地などを活用した計約6千平方メートルの農園でハーブや葉物野菜などを生産。直売や加工品販売を行う。農園維持と地域交流のためのボランティア(農園サポーター)制度を導入している。

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