【やまゆり園事件2年】差別断じる規範 今こそ ヘイトスピーチと闘うわけ|カナロコ|神奈川新聞ニュース

【やまゆり園事件2年】差別断じる規範 今こそ ヘイトスピーチと闘うわけ

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/07/30 11:24 更新:2018/11/13 19:39
【時代の正体取材班=石橋 学】東京・永田町の自民党本部前の路上は満身の怒りに打ち震える人々で埋め尽くされていた。22歳のレズビアンがマイクを手に叫ぶ。「私が私であることを誰にも止めさせない」。呼応するコールがこだました。「差別はやめろ」「人権無視する議員はいらない」

 27日夜、同党の杉田水脈(みお)衆院議員の辞職を求めるデモ。杉田氏は「LGBTは子どもを作らないから生産性がない」と性的少数者を差別する文章を月刊誌に寄稿していた。非難を示そうと集まった人々は主催者発表で5千人に膨れ上がった。

 川崎市幸区の自宅で志田晴美さん(50)はツイッターの投稿からその様子を追っていた。抗議の声を上げに行かなければ、との思いもあったが、どうしても足を向けることができなかった。「ふたをしたはずの思いが呼び起こされそうで、怖い」。子どもを産まないという選択に負い目を感じた過去があった。

 自身はLGBTではないが、差別の刃(やいば)が突きつけられているのをはっきり感じていた。

 「子どもを産まないから支援は必要ないという杉田氏の発想は、生きている価値がないというのと同じ。子どもがいない私も価値がないのだと思わされた。1度は心を整理し、振り返らずに生きていこうと決めたのに」

 生産性などという国家主義むき出しの物差しで人の価値を計るおぞましさに足がすくんだ。

 そもそも、いかなる尺度をもってしても人間の存在を否定することなど許されない。同じ人間を等しくある存在とみなさず、生きるべき者とそうでない者を分け隔てる。差別はそうして人を殺してきた。

 2年前の7月26日、相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が刺殺され、26人が重軽傷を負った事件。殺人などの罪で起訴された植松聖被告は、意思疎通ができないとみなした障害者を「心失者」と呼び、「障害者は不幸を生み出すことしかできない」と、大量虐殺を正当化した。

 被告の心に巣くう優生思想が政権与党の議員によって公然と発表される恐怖。中東のテレビ局アルジャジーラが杉田氏の「議員」という肩書に「Lawmaker(ローメーカー)」という英単語を当てていることに、はっとした。杉田氏は国権の最高機関で、立法を職務とする立場にいる。

 「黙っていたら許容されたとみなされ、同じ考えを持つ人が国会議員にも増えるかもしれない。植松被告のような考えで恐ろしい法律が作られないとも限らない」

 杞憂(きゆう)とは思わない。障害者の強制不妊手術という人権侵害を合法化し、未来の命を奪ってきた優生保護法が改正をみたのは1996年のことだ。

政権の中枢


 志田さんは、在日コリアンの殺害までも唱えるへイトデモに抗議するカウンター活動を続けてきた。日の丸を掲げ「朝鮮人をたたき出せ」と叫ぶ一団が川崎駅前に現れるようになったのは2013年5月のこと。慣れ親しみ、愛着のある地元のまちが汚され、壊されると感じた。

 あるとき、沿道から「レイシストは帰れ」と声を上げていると、デモの先頭を歩く主催者が憎悪に満ちた目を向け、「この朝鮮人!」と叫んできた。「差別に反対すれば、私も標的にされるのだと知った」

 一つの差別を許せば、あらゆる差別がまかり通るようになる。杉田氏の過去の言説は、放置が招いた時代の空気を示している。

 次世代の党に所属していた14年、衆院本会議で質問に立ち、「男女平等は絶対に実現し得ない反道徳の妄想」と女性蔑視発言を行ったのを皮切りに、同年の衆院選で落選後は、沖縄の基地反対運動に取り組む市民を「暴力集団」と誹謗(ひぼう)中傷したり、旧日本軍慰安婦をかたどった少女像について対談本の中で「建てるたびに爆破すればいい」と述べて元慰安婦の女性の尊厳を愚弄(ぐろう)したり、標的を次々と変えながらヘイト発言をしてきた。...

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