〈時代の正体〉やまゆり園事件と強制不妊手術【下】実名 差別に克つため|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉やまゆり園事件と強制不妊手術【下】実名 差別に克つため

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/07/28 02:00 更新:2018/11/12 18:51
【やまゆり園事件取材班=川島秀宜、石川泰大】津久井やまゆり園(相模原市)で入所者19人が殺害された事件から2年。起訴された植松聖被告(28)は、なおも命の優劣に偏執する。旧優生保護法(1948-96年)に基づく強制不妊手術の証言を引き、事件に潜む優生思想と向き合う。3回連載の最終回。


 秋風に乗った赤い風船が、北西から横浜市の園舎に舞い降りてきた。津久井やまゆり園が相模原市から昨年4月に仮移転して半年後。入倉かおる園長(61)は、天上の19人を思った。

 「届けてくれたのは、あなたでしたね」。今月23日の追悼式で弔辞に込めた。入所者が19色の折り紙でこしらえたヤマユリの造花が、祭壇を飾った。

 多彩な19人の「あなた」。県は実名による追悼を遺族と直前まで調整したが、ことしもかなわなかった。「機が熟していないと判断した」と黒岩祐治知事は悔やむ。家族会の大月和真会長(68)は「もう少しというより、だいぶ時間がかかるだろう」と察する。

 遺族の1人は、取材に「そっとしておいてください。お断りします」と話した。

 「根深い偏見と差別が、遺族の口をつぐませてしまっている」。長男、一矢さん(45)がひん死の重傷を負った尾野剛志さん(74)は、もどかしそうだった。被害者家族として唯一、事件直後から実名で証言を続ける。...

PR